第35話 魔女狩り

 校内に着き、教室へと入ると香ばしい匂いがした。

 屋台セットが教室の中央で組まれていて、看板がありそこにはホットドッグと書かれていた。なぜそんなものが、と思い板書を見ると「文化祭まで残り三週間」とあった。


「あっ、あれ志桜里じゃね」

「味見してもらおうよ」


 すると数人の女子グループがこちらに来た。反射的に警戒してしまう。体がこわばってしまう。

 周囲を見るも、麗美の姿はなかった。


「ねえ、志桜里。ホットドッグ味見してよ」

「てかっ、出席日数大丈夫? ずっと休んでいたけど」


 お前らのせいだろうが、という言葉を飲み込んだ。


「あのーどうして私に構うの」


 すると名の知らない女子は狂笑を浮かべた。「だって私たち親友じゃん」


「親友……」


 そしたら耳元で囁いてきた。「私たちがあんたのこといじめたの、絶対に内緒だからね。もしバレたらあんたのこと、殺すから」


 だから仲良くしよ、と理不尽なことを平気に言ってくる彼女たち。

 どういうことなのだろう。疑問に思ったまま、ホットドッグを渡される。

 そのとき自然と見遣った場所にセンター試験まであと〇カ月移と書かれた札がぶら下がっていた。それですべてが繋がった。彼女たちは大学や就職で不利になる「いじめていた」という事実をもう無かったことにしたいのだろう。

 なんだよそれは、と思った。それで不都合になるいじめの主犯格だった麗美に魔女狩りの審判を下らさせたんだ。


 マスタードとケチャップがほどよく乗ったホットドッグをじっと見つめる。綺麗に体裁を整えるためには余分や過剰なものを除けなくてはならない。それこそがこの世の真理か。


 こうして志桜里がいじめられることは無くなった。


 でも、今度は麗美が虐められることに、疑問がある。今日彼女の元へ行ってみるか。

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