第20話 メイド喫茶で思い出を
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梅田駅の周辺を歩いていると、とあるメイド喫茶を見つけた。
「ねえ、入ってみない?」
「メイド喫茶? 確かに興味はあるけど……」
そう言って一緒に入店する。
「おかえりなさいませ。ご主人様」
近世のメイドの服装を着ている、可愛らしい女性たちに出迎えられた。
すると香帆が上気した顔で、「興奮するねえ!」と言った。ちょっとキモかった。
席に座るとメイドが「何をお飲みになられますか?」と訊ねてきたので、志桜里と香帆はカフェラテを注文した。
「何を注文する?」
志桜里がそう聞くと、香帆はにこっと笑って、「ここは一択でしょ。せーの」
「オムライス」
「たこ焼き」
なお、オムライスと言ったのが香帆で、たこ焼きと言ったのが志桜里だ。
「ここはオムライスでしょ。ラブラブチューニュしてもらおうよ」
「もう、ここに来てからずっとキモいよ」
するとメイドが来て、「お二人はご友人さんですか?」と訊ねてきた。
「ええ、そうで——」
「いえ、恋人同士です」
また、恋人同士ですと言ったのは香帆である。志桜里は頭を抱えそうになった。確かにそうだけれども……
そしたらメイドは手を叩き、「だったらメイド服に着替えてみてはどうですか? そしてその格好で恋人様にラブを注入するのです」ともはや痛々しいを通り越して頭痛が志桜里の頭を貫通する。
「それいいですね。志桜里ちゃん頼むよう」
「わかった。わかったから。着替えてくるから」
バックヤードの方へ向かい、サイズに合ったメイド服に着替える。
「いいですか。彼女さんはオムライスを注文されました」
「はい」
「『ラブ・ラブ・あなたのことを大好きずっきゅん注入~♡』と言ってケチャップで愛してると書いてください」
駄目だ。恥ずかしくて死にそう。
「出来上がりましたよ。オムライス」厨房のスタッフがそう言った。
「じゃあ持っていきます」
沈んだ顔で皿を持つ。そして香帆のテーブルにオムライスを置いて、ケチャップで『愛してる』を書きながら「ラブ・ラブ・あなたのことを大好きずきゅん注入~」と棒読みで言った。
香帆はというと口元を手で押さえて笑いをこらえている。こいつ、殴ってやろうか。
そして彼女がオムライスを一口食べると、その笑顔はなぜか感涙に代わった。
それがどうしてかは分からなかった。
最後にチェキを撮った。その出来栄えに満足がいったのか香帆は再び上機嫌になった。
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