第13話 駄菓子屋で天丼?

 スクールカウンセラーの家は、駄菓子屋だった。


 東京にこんな駄菓子屋があったんだ、とか思っちゃうほど古びた素敵な雰囲気を醸し出す店だった。


 引き戸を開けるカウンセラー。そして部屋の電灯をつけて、それからうまい棒の明太子味を志桜里に渡した。


「ありがとうございます」

 そしたら志桜里は周囲を見渡し、

「親御さんが駄菓子屋を経営されているんですか?」

「いいえ、学校の許可を得て子供たちがよく利用する、駄菓子屋で児童の心的ケアも行うの。そうやって私自身カウンセラーとしての能力を鍛えるの。で、どう? しばらく話を聞かせてもらえないかな?」


「話って、何を聞くつもりなんですか?」


 掘りごたつにカウンセラーは入って、手招きする。それに応じる志桜里。


「他にも駄菓子はたくさんあるわよ」


「いや、太りたくないんで」


「じゃあおにぎりにする?」


「だから、太りたくないんですって‼」


「じゃあ天丼……」


「このやり取りが天丼ですからね? それ分かってて聞いてますよね?」


 豪快に笑うカウンセラー。その姿がどこか可愛らしかった。


 それから一時間ほど苛めについて相談に乗ってもらった。


 

 

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