第5話 約束、一日一回、抱きしめ合うこと

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「私の名前は香帆って言うの。志連香帆」

「よろしくお願いします……」

 桃色のベッドの上で、互いの吐息がかかる距離での自己紹介に、どこか志桜里は戸惑っていた。

 そしたら香帆は志桜里の髪に触れてきた。ビクッと肩が震えてしまう志桜里。


「大丈夫。緊張しないで」


「は、はい。すみません……」


 耳にそっと息を吹きかけるように、香帆が喋りかけてくる。

「大丈夫だから」


「な、う、今からなにするんですか」


「何すると思う?」


 香帆がそう言いながら志桜里の太ももにそっと指を撫でてくる。


「あなたがもう、死にたいとか思わないぐらい、気持ちいいことしない?」


「えっと、それは……その……」


 挙動不審な志桜里にけたけたと笑う香帆。

 その笑みはとても美しかった。まるでいたいけな少女のようで。まだ穢れも知らない純粋さがにじみ出ていた。

 だがしかし、彼女が述べているのは官能的な惑わしだった。

 それに困ってしまう志桜里。


 本当にこのまま、自分たちしちゃうの?


 するとすうぅと香帆は触れていた髪の毛から手を抜いた。

 それからぎゅうと抱きしめてきた。


「ねえ、約束」


「え?」


「一日一回、抱きしめ合うこと」

 

 それがこの少女が提示した、約束だった。

 

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