第2話 校舎裏

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 校舎裏。志桜里は三人の女子から暴行を受けていた。髪を引っ張られ、腹部を蹴られる。嘔気が食道を駆け巡ったが、ここで嘔吐はしなかった。


「ほら、吐いちまえよ」


 横顔も殴られる。痣にはならない程度に加減されながら、一発一発重いを込めて。


「じゃあ、もう行こうよ」


 いじめっ子たちは嘲笑を残しながら去っていった。志桜里は切れている唇の血をぬぐって、よろよろと立ち上がった。また涙目になっていた志桜里は、下唇を噛み締めた。どこか血の味がするそれを噛んでいることで、安心するのだ。


 それでも、その安心は長くは続かなかった。

 校舎の斜陽は、七月の照り返しの日光で、志桜里の肌をじりじりと焼く。

 スニーカーで地面を踏みしめながら、少しの緊張を肌で感じつつ校舎の中へと向かった。

 学校は嫌なことの集まりだ。

 志桜里がいじめられるようになったきっかけは、「空気」が読めなかったからだ。


 相手が何を考えているかが分からなくて。つい余計なことを喋っちゃう。そんな自分をクラスのカースト上位の女子が目をつけて、いじめをするようになった。


「あいつキモくね」


 そんな言葉を槍にして、傷つけてくる。

 それが当たり前かのように。

 

 でも、だったらそんな現実から逃げてしまえばいいだろう。それなのに、自分はどうしてそこまでして学校に固執するのだろう。将来のため? 親の学費を無駄にしないため? 

 

 もう疲れたよ……


 

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