第一章 壊れた自分  

第1話 毎日見ている夢

 1


 司馬志桜里には、毎日見ている夢がある。

 それは駅のホームに飛びおり、この糞ったれた運命や宿命ごと、自身の体を壊す夢。

 運命にも、宿命にも呪われた、最悪な女。それが司馬志桜里だ。

 金切声を上げながら車両の扉が閉まる。そしてゆっくりと発進し、ホームから抜けたら見咎めるような陽光が志桜里の心を刺す。きゅっと心臓が締め付けられた。

 そうだ、自分は今から地獄へと向かねばならないのだ、と改めて認識する。


 ぐすっ、と鼻をすする。いつの間にか涙目になっていたようだ。憂鬱な気分を変えるためサブスクで音楽を鳴らし、イヤホンを耳に差す。好きな男性アイドルの歌唱曲の旋律を堪能する。それでも、不条理に対する憤怒は収まりはしなかった。それと戦々恐々とするような畏怖。志桜里は、怒りと同時にさまざまなことが怖かった。

 そして池袋駅に降りて、バス停に寄る。次の本線まで三十分だ。

 志桜里はベンチに座って陽光に手をかざした。それでも、手は焼ききれなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る