君の唇は百合のはなびらの味

大瀧潤希sun

プロローグ

「ねえ、あなたの唇はどんな味?」

 細い指が司馬しば志桜里しおりの顎もとに触れて、唇を奪う彼女の名前は志連しれん香帆かほ

 香帆は二重の目をきゅっと細めて、意地悪な笑みを浮かべた。「とっても美味しい」


 ここは二人以外だれもいないバス停。古びた木造の屋根に、ぽつぽつと雨脚がそっと撫でる。

 志桜里はうつむき、「ひどいよ」とか細くつぶやいた。

 今にも泣きだしそうな志桜里の頭を撫でる香帆。

「私、あなたのこと『殺したいくらい』大好きなの。その気持ち、わかってくれるよね?」

 そんな狂気じみたことを、平易的に言ったことに志桜里は恐くなった。

 

 彼女は、恐ろしい。

 でも、そんな彼女を心のどこかで求めてしまう自分がいる。


 志桜里も恐々としながら香帆の頬を触る。

 そして震えながら同じように、キスをした。


 それに、意味なんてあるのだろうか。単純な官能さに、惑っているだけじゃないのか。


 もう、志桜里は彼女に依存している。


 いつか、自分は彼女に殺されてしまうというのに……









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君の唇は百合のはなびらの味 大瀧潤希sun @ootaki0615

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