帝都のお姫様と悪事
第16話
町を歩いているとある女子のグループから声がかかった。
「清士郎くーん」
「やあ、こんにちは」
「一緒に美味しい甘味処に行きましょう?」
「今日も用事があるんだ、門組の所」
「門組? あまり関わらないほうが良いわよ」
「門組の元締め留守にしてるんじゃなかったっけ?」
「えっ、なんで?」
「帝都のお姫様の結婚式に呼ばれたらしいわよ」
「ああ、四番目のお姫様ね」
「へー、そうなんだ」
そこから一切話が入ってこなくなった。
無理やり用事をつくって女子グループと別れた。
「凛夏ちゃん結婚すんだな」
「ええそうみたいですね」
「今度は良いヤツだといいな」
「そうですね。弟子には幸せになってもらいたいです」
「清士郎~切ないな」
「そんなことはないですよ」
階段を登りながら話をする。
きっと姫君の通力が消えればただの良い思い出になる。思い出になれば後は忘れるだけだ。声を忘れ、顔を忘れ、温もりを忘れ、最後は存在を忘れるのだ。そう思いながら家路につく。
階段を登りきると杜と丹がいた。清士郎に気がつくと跪く。
「どうかされました?」
「凛夏姫が結婚するのを嫌がっておられる」
「清士郎様、どうか私共に力を貸してください」
「いやいや、どこまでもわがままなお姫様ですね。僕は忙しいので付き合っていられません……今度こそお幸せにとお伝えください」
杜と丹の横を通り過ぎる。
「相手はあの京斗だ」
「あれでは姫があまりにも可哀想です」
清士郎はぴくりと反応して少し考えている。
「いや、一度逃げだしてもまた受け入れるなら本気なのではないでしょうか?」
「そんなことはありません。ここ数ヶ月のヤツの交友録と悪事をまとめた書がありますのでそれだけでもご覧ください」
「アイツなにやったんだ?」
本を興味本意で覗いた龍神の顎が外れた。
「ロン様! 大丈夫ですか?」
清士郎は龍神の顎を元に戻そうとする。
龍神は本を広げて清士郎の顔に張りつけた。
「うぐっ!」
顔に張りついた本を剥がしたら箇条書きが目にはいる。
「これは本当に事実なのですか?」
それはとても口で言えそうもないくらいおぞましい内容だった。
「ぞっとしたわ」
「それは全て本当です」
「これは行かねばなりませんね」
「ありがとうございます」
「でも僕が迎えに行くということは彼女は姫ではいられなくなります、良いのですか?」
「承知の上です」
「よろしく頼む」
「ならば遠慮は要らないですね」
清士郎は京斗への憎しみを込めて、ぎりっと歯を食いしばった。
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