元締めと酒

第15話

「清士郎、飲まないか? 話があるんだ」

「えっ? 珍しい誘いですね」


大吉の誘いに正直、戸惑う。

話があるみたいだけどなんだろう。


「ついに告白か?」


龍神が茶化す。


「いやいや、売り飛ばされたりしないですよね……」

「まだ昔の事恨んでいるんだね」


そりゃそうだろと清士郎は思う。



大吉についていくと大きな座敷に通された。

酒を飲みはじめた大吉だが、ペースが早い。



「聞いてくれるか? 君のお母さんを私がどれ程好きたっだか!」

「は?」

「清士郎、子供の頃のお前はトキにそっっくりだった!」

「はあ、そうなのですね」


大吉はもう酔っていた、酒の勢いで言いたいことを言うつもりらしい。


「学生の頃、私はトキが好きだったんだ」


それはもう聞いた。



「それなのにトキは一家で夜逃げして行方知らず、どこぞの馬の骨と結婚してしまった」

「そうだったんですね」

「お前を見つけたとき私は後悔した。私ならもっとトキを幸せにできた。もう相手の男は死んでるが殺してやりたい」


それから清士郎の母がいかに好きだったか、父をいかに憎んでいるかを語った。

大吉は男泣きしはじめた、清士郎はまだ一滴も飲んでいない。



目の前にいるのは昔の恋を拗らせた、ただの男だった。


「清士郎の母ちゃんのファンなんだな」

「清士郎~立派になって~」


大吉の感情は愛憎だった。

今まででずっと人間らしい一面を見た気がした。

大吉の介抱しながらその日が終わってしまった。

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