凛夏とクズ野郎
第12話
清士郎は川で洗った洗濯物を干しはじめた。相変わらず凛夏は手伝わず背中にはりつく。もうこれが日課になってしまった。
「凛夏ここにいたのか! 探したぞ!」
「あら、京斗様。よくここがわかりましたね」
京斗と呼ばれた青年は怒っている。
「何でいなくなった? それよりそいつは何だ?」
「そんなの決まっているじゃない、愛の逃避行です! 私はこの方と夫婦になるのです」
凛夏は清士郎の背中から顔だけ出して京斗と対話している。
清士郎は二人に挟まれて少し戸惑う。
「夫婦だと? お前は俺と結婚するんだろ?」
「婚約取り止めの慰謝料を六オン支払ったはずです。それに貴方みたいに女を取っ替え引っ替えすぐ捨てるような人はごめんです」
「何だと?! このクズ野郎!」
龍神は見えない聞こえないことを良いことに暴言を吐きだした。
「そんなことはない。凛夏だけは本気だ」
「そんなの信用できません。それに私はもう、この清士郎と深い仲なのです!」
「深い仲?」
「そうです。手を握ったり同じ布団で寝て……それ以上は私の口からは言えませんけど深い仲です」
「したのか?」
確かに墨をする時に手を握り、凛夏が潜り込んできて同じ布団で一回寝たなと思い返す。
「ああ、しましたね」
「もう処女じゃないのか?」
清士郎の返答に京斗は愕然としていた。
「もしかしてコイツ処女が好きなのか? だから女をむしゃむしゃぽいするのか?」
京斗の一言に龍神以外、皆が黙ってしまった。
「コイツ、女の敵だな! 女の子の敵はオレの敵だ」
龍神は京斗に向かって勢いよく水を吐いた。
「何だ? どっから水が出た?」
「そうですか、ロン様の敵は僕の敵ですね。姫君、これをあの方に」
そう言うと凛夏が書いた簡易版、水の御札を出した。
凛夏が頷いて、水の御札を京斗に向ける。どんどん黒紫の液体が出てくる。
ウネウネと動き、不気味だ。
清士郎が凛夏の出した色水に違う御札を投げると、龍の形になって京斗に襲いかかった。
ブドウジュースの龍に襲われた京斗は悲鳴をあげながら気絶した。
「コイツどうすんだ?」
「町の外れに捨ててしまいましょう」
「丹、手伝ってあげて」
「はっ!!」
目覚めた京斗がアリまみれだったことは一部の人しか知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます