清士郎と元締め

第6話

凛夏は言葉だけでなく本当に清士郎に三千イェンを支払った。

そのうち三百イェンだけ手元に置き後は龍神に預けた。

龍神は人間の入れない異空間を開くことができる。

清士郎も御札があれば出入り可能だが、御札がもったいないし手間がかかる。



「三人分です。しばらくこの町で厄介になるのでよろしくお願いします」

「あの山の一体は君の物だから、挨拶料なんていいのに、律儀だねぇ」

「いえ、面倒なことは嫌いなので、あらかじめ手を打つだけです」

「わかった。部下にも伝えておくね」

「受領書をお願いします」


柔らかく笑う男が頷いた。彼はこの町の元締めだ。

清士郎はこの男が大嫌いだが多少は付き合いがある。


「では、失礼します」


清士郎はさっさと立ち去る。



窓から商店街を歩く清士郎の背中を見ながら元締めが言う。


「子供の頃、清士郎は高く売れそうだったんだがな、残念」

「大吉様は清士郎に甘いですね」



「そうだな割と気に入っているからな。飼い殺したい程にね」

「えっ?」


一生側に置いてどうするつもりだと部下はその先を妄想してしまった。


「私の後継ぎにどうかな?」


柔らかい笑みで誤魔化そうとしている。


「ご子息様が黙っていないでしょうね」

「ふふふ。そうだよね」


部下は、それ以上はあまり深く聞かない方がいいと思った。

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