はわわと六オン

第5話

「大変申し訳ございませんでした」


次の日、お姫様がしおらしく謝ってきた。

龍神が姫様に飛びついた。

龍神が撫でられる度に「はわわ」と変な声をあげている。



清士郎は洗濯物をしようとしていた。


「あの奥さまは?」

「そんなのいないけど、僕が一番大事なのはロン様です。他の誰かが一番になることはあり得ないですからね」

「二番目でも構いません。お側に置いてください」

「またそれですか、ここに住みたければそれなりの対価が必要ですよ?」

「対価……?」

「お金を払うなり、働くなりいろいろありますね」

「では、持参金として三千イェンをお支払しますので私と杜と丹を置いてください」

「そんな全財産投げ売らなくてもいんですよ?」

「三千イェンは凛夏姫の財産の一部に過ぎません」


凛夏の家来がそう言った。


「家を出る時に半分失いましたがまだ六オンはあります」

「六オン……」


清士郎の目がお金になった瞬間だった。



「良いじゃないか、オレは気に入った。嫁にしてやれよ」

「いえ、あくまでも僕の弟子として扱います」

「では良いのですね」


凛夏は喜んで龍神を連れて玄関の引戸を開けて入っていった。


「洗濯物を手伝わそうと思ったのに……」


その場に清士郎だけが残された。

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