亜麻色と翠玉の瞳
第3話
遥か天空に続く霞がかった城が見える。
「ほー」
見上げすぎて首が痛い。何せ田舎者なので二階建て以上はあまり見たことがない。
「どうした? こっちだ」
「ん? こちらは?」
城に対し、こぢんまりとした入り口だった。
「あまり公には出来ない。裏から入る、歓迎会とかはないからな。そのつもりでいてくれば助かる」
「そもそも帝城とは思っていなかったので、お構いなく。むしろこんな格好で良かったのですかね」
清士郎はふだん着だった。そんな疑問には答えず二人はどんどん進んでいく。
「……」
この建物にしては小さい部屋に通された。
寝台の側に一人の少女がいた。
あま色の髪に白い肌、長い睫毛に縁取られた翠玉の瞳が印象的だった。
大層な美人だ。きっとロン様のタイプだろうなと思う。
清士郎は作法がわからなかったので、とりあえず跪いた。
「名前はなんというの?」
「清士郎です」
「あなたがこの薬を?」
「はい」
返事してみたものの苦情を言われるのではないかと内心では焦っている。
「この薬は何か光のようなモノが見えます。どうやって作られているのでしょうか?」
「神通力が込められています。恐らくそれは神通力が目に見えているのではないでしょうか?」
「神通力?」
「霊力とでも言いますか、僕は龍神様から授かった知恵と技術で薬や護符などを作っています」
「人知を超えた不思議な力ということですね」
「はい」
目の前の少女は何か考えている。
「私には神通力はあるでしょうか?」
「多少はあると思います」
清士郎でも神通力が光で見えることはない。
「試してみます?」
少女が頷くのを確認してから清士郎は懐から水晶玉を取りだし、少女に差し出した。
「これは?」
「水晶玉です。この中に何が見えますか?」
少女はおそるおそる覗いた。
「……水色の四肢の生えた蛇が見えます」
龍神は頬を赤らめて手を振った。
「そうですか、神通力の素質があるようですよ」
少女は花でも飛ばすかのように喜んだ。
側に控えていた家来の一人が話し出す。
「やはりそうですか、姫の母君は巫女だったとお聞きしております」
「だから、やっぱりお母様は偽物なんかじゃなかったのよ。私、決めたわ、将来は巫女になる!」
進路相談のために呼ばれたのかと思うと気が抜けた。
「では、僕はこれで」
「帰るのですか?」
「はい。僕には三食食べさせていかなきゃいけない相手がいるので帰ります」
「妻帯者ということですかね。お若いのに」
「まあ、そう思ってくださって結構です」
「杜、案内してあげてください」
「はっ!!」
杜と呼ばれた家来が城を出るまで道を案内してくれた。
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