第7話 99%って言うのはよく外れるって意味
「そうなんですよー。結構大変な仕事なんですよ?あ、私、
思いの外会話が盛り上がり、名前まで教えてもらった。
新井睦美さん、黒髪のロングで髪は真ん中から別れてオデコが出ている。
顔に自信があると言うことだろうか?
気が強そうで仕事も出来そうな雰囲気も出ていて、何故こんなホームレスの相手も多そうな買取カウンターに座っているのか疑問に思ってしまう程の美人さんだ。
ちなみに俺をホームレスと間違えたのは一人だったかららしい。
ホームレスの人はパーティーを組まないのだとか。
後、口に出さなかったけど、おっさんだからだろう。
若い子が一人ならパっと見て新人だってわかるからね。
「あ、俺は斎藤春道です」
「知ってますよー。お仕事は何をなさっているんですか?」
写真と名前入りのライセンスを渡したからね。
名乗ったのは一応だ。
しかしグイグイ来るね。
まさかまだホームレスを疑われている?
「えーと、名刺は、……あったかな?」
ダンジョンなので名刺入れは持ってきていなかったが、財布の中に入れてあった分があったのでそれを渡す。
「あら?
三日天下ならぬ、三日係長ですけどね。
「まあ名前だけは一流企業ですね。冒険者業がうまくいったらやめるつもりですけど」
「あらまあ、そうなんですか?勿体ない……」
リストラだから、順番は逆だが言わぬが花よ。
「でもわからないことだらけで、なにか初心者向けのアドバイスとかあったらお願いします」
「10階層までなら比較的簡単に進むことが出来ると思いますけど、1人ではボス部屋に入らないでくださいね。ボスモンスターのことはご存じですか?」
それは初心者講習でも聞いたし、ネットでもよく見てきた情報だ。
ボスは大きく別けて三種類いる。
まずは階層ボスと言う、次の階への階段のある部屋を守っているボス。
この部屋には5人しか入れず、ボスを倒さない限り部屋から出ることは出来ない。
1年に一度、年が明けた瞬間にだけ復活するので、基本的には各ダンジョンのトップ冒険者しかお目に掛かることはないボスモンスターとなる。
この階層ボスが倒されたあとはボス部屋の人数制限は解除される。
ボス部屋には普通のモンスターはポップしないのでここは安全地帯となり、冒険者の野営地点となる他、浅い階層だと食事を出す屋台とかもあるらしいね。
部屋の中に誰か一人でも居れば地面に物が吸収されることはないので、10階層毎に物資集積所としても利用されていて、協会の買取サービスや携帯食料の販売などもあるのだとか。
この階層ボスを覚えると言うよりは1階層毎にセーフティエリアがあるってことを覚えた方がいいだろうね。
(二種類目はフィールドボス。または徘徊ボス)
その名の通り、ボス部屋ではなくフィールドを徘徊しているボスのことである。
各階層に1匹ずつ配置されてはいるが、このボスも1年に一度しか
この徘徊ボスは必ずスキルオーブをドロップするらしいので、お正月にはコイツの争奪戦となるんだとか。
スキルオーブと言うのはスキルポイントを消費しないでスキルを覚えることが出来る便利アイテムのことだ。
使い捨てタイプの魔道具ということになるのかな?
スキルポイントはモンスターを倒すことで経験値の他に振り込まれているポイントのことで、ゴブリンを100匹倒しても1も貯まらないのだとか。
そうなると当然スキルオーブの値段は跳ね上がり、覚えられるスキル次第では1億円を超える値段にもなるらしい。
会えたらラッキー、……つまり俺とは無関係のヤツですね。
(三種類目はジョブ部屋のボス。ボスと言ったら普通はこれだ)
各階層には次の階に下りるボス部屋の他に、ジョブが得られるジョブ部屋と呼ばれる小部屋が存在する。
ここにいるボスを倒すことでジョブチェンジが出来る訳だね。
部屋に入れる人数は5人まで。
こちらもボスを倒すまでは部屋から出ることは出来ないが、全員が部屋から出ると即座に新しいボスがポップするらしい。
人気のジョブが得られるボス部屋は冒険者が並んでいることもあるが、誰でも挑戦することが出来る。
(誰でもとか、100%っていうのはいい言葉だよね。99%って言うのは俺にはよく外れるって意味だし)
ジョブと言うのは、【戦士】だったり【魔法使い】だったりがあって、そのジョブになることで対応するスキルを覚えることが出来るのだとか。
わかりやすく例を上げれば、【火魔法使い】のジョブになれば【ファイアボール】のスキルを覚えることが出来ると言うことだ。
(魔法使いか……。悪くないかもな)
手加減が利かないのなら魔法で倒せばいいじゃない作戦。
これはいいんじゃないか?
魔法使いはMP消費が激しいからオススメじゃないと言うのをネットで見たが、幸いなことに俺のMPは99990。
有り余っているのだ。
「ダンジョン内では知らない扉があっても入ってはダメですよ?普通に死にますからね。まあ地図に書いてあるので大丈夫だとは思いますが。……もう買いました?地図」
「うっ、……下さい」
地図は買ったんだよ。
本部でね。
そしたらその日の内に入場禁止ですよ。
ついてないですね……。
地図は10階層毎にモンスターの分布や注意書き付き、紙とデータ両方合わせて1万円だ。
それでも命には代えられないから買うしかない。
ちなみに年が変わる時にダンジョンの構造も少しだけ変わるのでこのマップは毎年買わないといけないとか……。
「ありがとうございます。10階層まではすぐですよ?20階層の分までどうです?」
推奨レベルというのがある。
10階層に出てくるモンスターの強さはレベル10なので、こちらもレベルが10ならば問題なく一人で倒せるので、10階層の推奨レベル10となっている。
レベル10と言うとオリンピック選手並みの身体能力。
まあまだ常識の範囲。
オリンピック選手ならレベル1でも行こうと思えば行ける、推奨はしてないんだけどね。
ちなみにパーティーの人数によって推奨レベルは変わる。
2人ならレベルより1階層上、3人なら2階層、5人のフルメンバーならレベルの4階層まで上には行っても大丈夫とされている。
上の階に行けば行くほどもらえる経験値は増えるので、5人で自分たちのレベルよりもちょっと上の階層で戦うのが普通だろう。
ただ俺の場合はレベル9999。
適正階層は9999階と言うことになるね。
「20階までお願いします」
9999階までの分なら999万円、払える訳がないのでとりあえず20階までの分を買っておく。
いや、その前にそこまでの地図はないか……。
とりあえず2万円のお支払い。
さっき買ったバットも2万円。
本部で買った地図と槍もあったね。
アパートの修理代でもウン万円は飛んでいく……。
それに対して収入は今のところたった1千円。
お昼代にもならない大赤字である。
ゴブリンを相手にしているとホームレスに間違われるし、午後からはもっと奥に行ってみようかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます