第15話 午睡

「……あれ?もしかして共有戻った?」


ふと、トリアがネイに尋ねる。


「確かに……なんだか繋がりを感じるわね。」


「ちょっと確認してみる?えっと……まぁカッターとか使わなくていっか。」


そう言ってトリアは自分の腕を抓る。


「……ヒリヒリするわ。共有は戻ったみたいね。」


「ほんと!?じゃあもう明日ぐらいには思考とかも共有されるかも!」


「ふふっ。なんというか……楽しみね。」


少し微笑みを浮かべながらネイはそう答えた。


反射の共有は何も不便なことばかりではなく、お互いの喜びや楽しみが二倍になるという利点もある。


それを一ヶ月程前に知っていたからこその発言だろう。


「共有戻ったら〜またハグしたい!あれとってもポカポカで気持ち良いんだ……。」


「確かに……あれば良かったわね。でも……それ以上のことをやるつもりはないの?」


「それ以上のこと……?」


見当が付かないという様子でトリアは首を傾げる。


「あの……あれよ!か、体を重ねる……。」


「えっ、それって……。」


顔を赤らめながら遠回しに伝えるネイを見て、トリアもその意味を察する。


「……私はいつでも良いわよ。」


「う、うん……。分かった……。」


気まずい時間が流れる。


お互い落ち着きのない様子で、視線を相手の顔に向けたり、落としたりしている。


「そ、そうだ!反射の共有が戻ったら色んな知識も共有されるから、今のうちに本とか読んだ方が良いかもね!」


気まずさを破るようにトリアがそう提案する。


「……今は貴女と一緒に居たい気分なの。」


「あぅ……はい……。」


気まずさを破ることは叶わず、しおらしいネイを目の前にトリアは何も出来なくなった。


「……」


ネイが何も言わずにトリアの横に座り、少し体を寄せてくる。


そっとトリアの手に自分の手を重ね、ネイは口を開く。


「……ねぇ。もし私が一緒に死んでって言ったら、死んでくれる?」


眠っているような、このまま消えてしまいそうな、そんな声色でそう尋ねる。


「……いきなりどうしたの?」


「なんとなく……気になったの。」


「もしそれでネイちゃんが救われるなら……私は間違いなくそうするよ。」


「……そう。ありがとう。」


その言葉を聞いて安心したのか、完全にトリアに体を預け、ネイは瞼を下ろす。


トリアはそんなネイを見て軽く微笑み、腰に手を当て抱き寄せる。


そのまま二人は、微睡みと共に午睡に耽る。





「ネ〜イちゃん!共有また戻ってきたみたいだね!こんなに早く戻るとは……やっぱり私とネイちゃんは相性が良いのかな!」


共有が戻ったのは本当らしく、エルトリアから伝わってくる気持ちの悪い感情に不快感を覚える。


「えぇ。そうみたいね。本当に不快で最悪な気分だわ。」


「え〜そんなこと言わなくても良いじゃん!」


毒舌を殆ど意に介さず、取って付けたような抗議の言葉だけを置いてエルトリアは私に近づいてくる。


「ねぇ……たまにはネイちゃんの方から動いてよ。今なら共有も戻ってるし……きっととっても気持ち良いよ?」


それは悪魔の囁きの様にも感じられる、蠱惑的な言葉だった。


「……本当に嫌なのだけれど。」


一応は嫌がる素振りを見せるが……実際は自分がその行為に強く惹かれていることを自覚する。


「嫌って言われてもね〜。これ、命令だよ?最初に好きにして良いって言ったのはネイちゃんだからね?」


そうだ。どうせ断ることなんて出来ない。そういう条件で契約を結んだのだから。


「ふふっ、それじゃあ……ネイちゃんが私の服脱がせてよ。」


相も変わらず変態性の高い要求をしてくる。


言われた通りにエルトリアの服に手をかけ、ボタンを一つずつ外していく。


ぷち……ぷち……ボタンを外す音が静かな部屋に響く。


時折、エルトリアのわざとらしい嬌声が耳に入る。その度に今すぐ首を絞めてやりたくなる気持ちに駆られるが、それを抑えてまたボタンを外す。


「んっ……勿論下も脱がせてね?」


言われなくても分かっている。一々言われるとどうしてこうも腹が立つのか。


エルトリアのスカートに手をあて、横側のチャックを下ろす。


「ふふっ。手つきがえっちだよ……ネイちゃん……。」


一体何を言っているのか。こんな世迷いごとに耳を傾けてはいけない。そう自分に言い聞かせ、スカートを脱がせる。


下着のみの姿になったエルトリアを見ても、何も扇情的な気持ちにはならない。


ただ不快感と、これから訪れる快楽への興味のみが脳を支配する。


私も、エルトリアと同じように狂気に飲まれてしまったのだろうか。


彼女のシャツを脱がせ、彼女の貧相な体つきを見てどこか情欲的な気持ちが湧き上がった。


この体をめちゃくちゃにしてやりたい。


可能なら、この肋骨を折り、腹に穴を開け、内臓をさらけ出してやりたい。


血まみれになったエルトリアの姿を想像すると、自らの下腹部が疼くのを感じた。


「えっちな顔してるよ……?ネイちゃん。」


あぁ。そうなのだろう。きっと今の私はすごい顔をしている。


こんな疼きは始めてだ。喉が渇くのを感じる。


口が水分を欲している。その水分とは血のことなのだろうか。


自らの裡から溢れ出る渇望を抑え、エルトリアの下も脱がせる。


先程までの興奮は感じられない。


少し落ち着き、何度か瞬きをする。


「ネイちゃんも脱いでよ。早く……一緒に気持ちよくなろ?」


さっきまでとは違いある程度乱雑に着ていたものを脱ぎ散らす。


あぁ。もう我慢ならないのだ。早く快楽に身を委ねたい。


この耐え難い渇望から抜け出したい。


気づいたときには、お互いもう全裸で、ベッドの上で見つめあっていた。


「エル……トリア。」


「な〜に?ネイちゃん。」


まるで催淫でも受けたかのように、エルトリアの顔を見るだけで欲情が止まらない。


きっと、私のこの気持ちもエルトリアなら受け止めてくれるのだろう。


唇を重ねた。


舌を入れ、彼女の全てを貪らんと。


やっとの思いで口を離したとき、もう私の理性は残っていなかった。

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