第13話 掃除

「雨だ〜!!!」


「この時期の雨は珍しいわね。普段は滅多に降らないのに……。」


「せっかくの雨だし、何かしようよ!!」


「……雨で出来ることって何があるの?」


「例えば……えっと……その……。」


「……ないわね。」


「雨、珍しいだけで何もないや……。」


「室内で何かしましょうか。この家って何か遊べるものはあるの?」


「う〜ん……昔住んでたところから遊び道具なんて持ってきた気がしないなぁ……。」


「……こんなに物があって遊び道具が無いなんてことあるの?」


「ここに置いてるの全部魔道具とかだからなぁ……。えっと……こんなのならあるよ?」


「何よその千枚通しみたいなのは……。危ないから仕舞っておきなさい。」


「は〜い!あと他には……蝿の脳を完璧再現したロボットとかあるよ。」


「えぇ……何よそれ。なんかもっとまともな物はないの?」


「まともな物……コンパスとか?」


「……それでどうやって遊ぶの?」


「なんかこう……回して遊ぶとか。」


「それで楽しめると思うならやってみましょうか。」


「うぅ……ネイちゃんが酷い……。」


「というか……本当にこの部屋どんだけ物があるの?棚の中にも外にも物が溢れてるけど……。」


「一回使ったらその辺に放っちゃうからどんどん溜まっちゃってさ……。」


「……だからここにコップが溜まってるのね。」


「ま、綺麗にはしてるから良いじゃん!扉からベッドまでちゃんと歩けるし!」


「基準が低すぎないかしら……。せっかくだし、今日は大掃除をしない?」


「大掃除……確かにアリだね!しよう!!」


「じゃあ早速……この辺に落ちてる物は全部捨てましょうか。」


「えっ!まだ使えるものもあるって!」


「……例えば?」


「このランダムに挟まる位置が変わる栞とか!」


「要らないわね。」


「この勝手に動き回る扇風機とか!」


「要らないわね。」


「このゴミを増やすゴミ箱とか!」


「要らないわね。」


「うえ〜ん!ネイちゃんがいじわる!!」


「じゃあもっとまともな物出しなさいよ……。」


「だって……他にあるのは絶対に揃わないルービックキューブとか……底が抜けた袋とかしかないし……。」


「じゃあ全部捨てて良いじゃない!」


「だって思い出が!!」


「……なにかエピソードがあるの?」


「いや……別に何もないけど……。」


「じゃあやっぱり捨てて良いじゃない!なんなのよもう……。」


「と、とにかく!全部捨てるのはダメ!!ちゃんと一個ずつ判断していこう!!」


「却下。全部捨てるわ。」


「そんな〜!!!!!」



「ふぅ……かなり綺麗になったわね。」


「あぁ……私の栞が……扇風機が……別に使ってなかったけど。」


「あの棚の中は……流石に取捨選択しないとダメそうね。」


「棚の中……私も何入れたか分かんないから怖いかも。」


「奥の方とかとんでもない事になってそうね……。」


「……あっ!これすっごく懐かしい!」


「それは……腕時計?」


「うん!私が子供の頃着けてたやつ!もう動かなくなっちゃったんだけどね……。これも捨てる?」


「いや、そういう思い出深い物は残しておきましょうか。」


「ほんと!?すっごく嬉しい!!」


「嬉しがる割にはこの棚の奥底に放置されてたけれどね……。」


「い、いや〜……それはそうと!この棚懐かしい物がいっぱいあるね!これは小学生の頃貰ったハンカチかな?これは中学生の頃のアルバム……これは……」


「……捨てるに捨てられないものが多いわね。」


「いや、ハンカチもアルバムも別に良いかな。貰っただけで思い出ないし。」


「あら、そうなの?じゃあ問答無用で捨てるけれど……。」


「あ〜そういえば一番下の引き出しに日記置いてたんだった!懐かしい〜!!」


「へぇ……日記。ちょっと見てみたいわね。中見せてくれる?」


「うん!良いよ!」


「えっと……『To diasfe eráve so xidea』……これ何語なの?」


「あ〜……それ自作言語で書いた日記だ。もう何年も前だから殆ど私もわかんないや……。」


「えぇ……。普通に書いた日記は無いの?」


「私の記憶には無いなぁ。探したらあるかもしれないけど。」


「……なんで自作言語で日記を書いたの?」


「いや〜日記ってなんか恥ずかしいじゃん?だからそれを少しでも軽減する為に……。」


「なんというか……凄いわね。」


「ふっふ〜ん!私、エルトリアは凄いのだ〜!」


「はいはい。掃除を続けましょうか。」


「ネイちゃんが冷た〜い!!!」



「……整理しても棚だとどれぐらい綺麗になったか分からないわね。」


「でもでも!どの引き出し開けても綺麗にまとまってる!すごいよ!!!」


「……この綺麗さはいつまで持つのでしょうね……。」


「なんとか……善処します……。」


「望みは薄そうね……。まぁ良いわ。そのときはまた一緒に整理しましょうか。」


「うんっ!また一緒にやろうね!!」


「さて……それじゃあ後は……って、トリア。その後ろにある棚は?」


「い、いや〜ここの整理は良いんじゃない?」


「……怪しいわね。見せてもらいましょうか。」


「いやっ、そのっ、なんというか……ここは……」


「……あぁ。成程。その……所謂おもちゃ——」


「い、言わないで!!そのっ、後でちゃんと整理しとくから……」


「え、えぇ。そうしておいてちょうだい……。」


「うぅ……辱められた……責任取って……。」


「辱められたって……いや、今のは私が悪いわね。……分かったわ。何をすれば良いの?」


「……ハグして。」


「別にいつもしてるじゃない…………はい。これで満足?」


「……もっと強く。」


「…………これぐらい?」


「……ネイちゃん。好き。」


「私もよ。トリア。」


「絶対離れない……。絶対に……。」


「死ぬまで……いや、死んでも一緒に居ましょうね。」


「……うん。」

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