第10話 読解

「いや〜色んな本あったね!……とっても重たいけど……。」


「……二回三回に分ければ良いってアドバイス聞かなかったのはどこの誰だったかしら?」


「うぐっ……だって……今日だけの出会いってあるじゃん?」


ネイとトリアはそれぞれ二十冊程の本を抱えている。本のジャンルは様々だが、一番多いのは反射に関する本だ。


「まぁ、これで暫くは図書館に行く必要はなさそうね。……そういえば、今日の夜ご飯は何が良い?」


「え〜ネイちゃんの作る物ならなんでも良い!」


「なんでも良いが一番困るのだけれど……どうしましょうか……。」


「じゃああれ食べたい!うどん!!」


「うどん……良いわね。今日はうどんにしましょうか。」


「やったあ!うどん〜!!」


「はしゃぐのは良いけど本落とさないようにするのよ……。」


余談だが、店に売られている物はトリアの群反射に基づいているらしい。


その為、店にある品をいつか使い切ってしまう。という心配は必要ない。


代金を払おうにも払う相手が居ない為、万引きという形でしか品を取れないのが玉に瑕であるが。





「ふぅ〜今日は疲れたね……。」


「そうね。でも、明日からの楽しみが増えたわ。」


「そうだね!明日は何の本から読もうかなぁ……。」


「……さて、今日はもう寝ましょうか。」


「うん。おやすみ、ネイちゃん。」


「おやすみ、トリア。」





「反射……ねぇ。」


「ん?どうしたのネイちゃん。」


「いや。それって私にも扱えないのかしら。」


「ん〜どうだろう。出来ないってことはないと思うけど……相当に難しいと思うよ?」


「具体的にどれぐらい難しいの?」


「そうだなぁ……少なくとも二十年は必要かな?」


「そんなに……二十年かけて何をするの?」


「反射の理解、反射の把握、反射の操作……この辺かな?反射の把握までならすぐに出来ると思うけどね。私とネイちゃんの共有が深まったらすぐに理解出来るよ。」


「そう……。」


「あぁそれと、反射操ってここから出ようとしても、私の操作に打ち勝たないといけないから難しいと思うよ。」


「……バレてるのね。」


「まぁそりゃね。別にそれで何か咎めるつもりはないけど。」


実際ネイちゃんに反射を操られるリスクはあるかな……。何か天才的な素養を有していたら可能性はあるけど……今のところそんな兆候もないし……


「……今貴女喋ってた?」


「ん?咎めるつもりはないって喋ってたけど……」


「いや、その後よ。」


「その後……あぁ。ネイちゃんも私の思考が分かるようになってきたのかな。」


「……あぁ、共有が深まったってやつかしら?」


「そうそれ。今から腕抓ってみるから、痛かったら共有深まってるって解釈で良いよ。」


「……なんだかヒリヒリ痛むわね。左腕を抓ってる?」


「おっ、当たり!思ってたよりかなり早かったな……ネイちゃん、何か考えてみてくれる?」


何かを考える……そう言われても思い浮かぶものはない。いや、今のこれ自体が何かを考えるになっているから構わないのか?


「うん。おっけい。私の方にも問題なく伝わってるね……。そろそろまとまりの無い思考とか、あやふやな感情とか、その辺も共有されてくるから気をつけてね。」


「なんというか……うるさくなりそうね。」





「どう?ネイちゃん。反射論は読み切れそう?」


「まだまだね……三日で読み切れないとは思っていなかったわ……。」


「ふふっ、難しいよね。私も子供の頃は半年ぐらいかかったかな……でも、ネイちゃんのペースなら一ヶ月以内に読み切れそうだね!」


「そうね……でも、今やってるところが難解すぎて中々先に進めないわ。」


「どれどれ……あ〜論理的反射か。なんか苦労した気がする!」


「……何か覚えてたりしない?」


「ごめん。さっぱりだ。この辺の記憶は消えちゃったからなぁ……。」


「まぁそうよね……。じっくり考えてみるわ。」


「頑張ってね!それにしても……記憶を消したのはダメだったなぁ……。」


「まぁ、やらない後悔よりやる後悔って言うじゃない。きっと良い判断よ。」


「そうかなぁ……うん!そういうことにしとこう!」


「ふふっ、それが得策ね。……そういえば、話は変わるけれど……私とトリアの共有はいつ戻るの?目を取ってから一週間は経つけれど……。」


「一時的なショックで切れちゃっただけだから……一ヶ月以内には戻るんじゃないかな?」


「そう……それなら安心ね。貴女の感情が共有されないのは寂しいのよ……。」


「……ちょっとドキってしちゃった。抱きしめて良い?」


「いつでも歓迎よ。」


「えへへ、ネイちゃんだ〜いすき!!」





「……結局今日は進展なし?」


「えぇ。どこかの誰かさんが一日中引っ付いてイチャイチャしてきたせいね。」


「うぐっ……だって……かわいかったから……。」


「はぁ……まぁ良いわ。どうせ時間は沢山あるものね。それに……反射より貴女の方が大事だもの。」


「……もう一回キスしていい?」


「良いわよ。またドキってしちゃった?」


「もう今日はずっとドキドキしてる……。」




「……えへへ。満足。」


「……私も満たされた気分だわ。」


「そっか……えへへ。それじゃあ……おやすみ。ネイちゃん。」


「おやすみ。トリア。」

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