第8話 夢中
「ネ〜イちゃん!」
「なに?トリア。」
「ん〜なんにもない!呼んだだけ!」
「ふふっ、かわいいわね……ほら、こっちおいで。」
「んっ……えへへ。」
あれから一ヶ月が経った。
自分でもあまりに強引な告白だったと思うけれど……それに後悔はしていない。
何故あんなにも強引に告白したのか……何故か、そうしなければならないと思った。それ以上の理由がない。……いや、自分でも本当にどうかしてると思うけれど。
「そういえばトリア……目の傷は大丈夫?私が言えたことじゃないけれど……。」
「ネイちゃんが上手に取ってくれたから大丈夫!たまにちょっと痛むけどね……ネイちゃんこそ大丈夫なの?私ちょっと下手だったでしょ……。」
「全然問題ないわ。それに……貴女とお揃いだからどんな痛みでも耐えられるわ。」
私とトリアはお互いの眼球を取った。お互いの独反射が共有されている状態では、入ってくる視界情報が多くなりすぎてしまうから。
……あれは本当に痛かった。幾らトリアと共に歩む為とはいえ……二度とやりたくない。
「……そういえば、記憶の方も大丈夫?最近物忘れが激しいとかはない?」
「ううん、平気だよ!反射のことだけ綺麗さっぱり忘れた!」
トリアは反射に関する自分の記憶を全て消した。本来は私をこの世界から出さない為だったのが……反射を忘れることで過去にケジメをつけて、私と一からやり直す。そういう意思に変わったらしい。
彼女が苦しむのは嫌だったけれど……それが彼女の意思だったのだ。仕方がない。
「それにしても……二人だけの世界ってのは良いね。誰にも邪魔をされずに……私達だけで平和に過ごせる。」
「……そうね。この世界を作ってくれた過去の貴女に感謝しないと。」
「え〜私は過去の私に感謝したくないよ!だってネイちゃんに酷いことしようとしてたんだから!」
「……別に私は酷いことされても良かったのよ?」
「私が嫌だ!ネイちゃんには笑顔で居てほしいの!」
「ふふっ、そう……じゃあ私が笑って過ごせるようにしてね?」
「もっちろん!!私に任せてよ!!!」
「あっそうだ!そういえばさ——」
「……さて、そろそろ寝ましょうか。」
「え〜もうちょっと話してたい!」
「明日も明後日もいっぱい話せるのよ。今日はもう寝ましょう。」
「しょぼ〜ん……じゃあ一緒に寝たい!!」
「ふふっ、そう言うと思ったわ。今日も一緒に寝ましょう。」
「やった〜!!!」
「……夢。そうよね。あんな楽しい日々が現実な訳なかったわよね。」
「あっ、目が覚めた?おはよう。ネイちゃん。」
「……こっちが悪い夢だったら良かったのに。」
「おろ、もしかして記憶ある感じ?」
「えぇ。最悪の記憶がね。」
「ほんと!?ええっと……ご飯とか食べられそうかな?」
「そのカップ麺のこと?要らないわ。食欲なんて湧かない。」
「そっか……でも、記憶あるなら良かった……。」
「……何も良くないわよ。」
周りを見渡す。出られそうなところはドアしかないが……どうせ鍵がないと開かないのだろう。
足枷もそのまま……はぁ。前途多難ってやつね。
「えっと……足枷外そうか?もう必要ないし……。」
「……外してくれるの?なら今すぐにでもそうしてちょうだい。」
「わ、わかった!ちょっと待っててね……鍵がこの辺に……」
……状況の整理が必要ね。反射がどうとか言っていたけれど……つまりは私の思考なんかは全て筒抜けってことだろう。
そして、感覚も共有されている。
……さて、どうやって抜け出せば良いのだろうか。
「鍵あった!今外すね……あと、抜け出したところで意味ないよ。」
「抜け出したところで意味がない……?どういうこと?」
「色々やってね。ネイちゃんのことを世界は認識出来ないし、ネイちゃんも世界のことを認識出来ないんだ。」
……抜け出したところで意味がない。ならばいっそのこと殺すしか……?
「あっ、私のこと殺したらネイちゃんも死ぬよ。そういう風になってるんだ。」
……さて、本当にどうしたものか……。
「とりあえず……色々説明しようか。ネイちゃんに何をしたのかとか……なんでネイちゃんのことを世界は認識出来ないのかとか……。」
「……そうね。聞きましょうか。」
「じゃあ説明するね!とりあえず……反射について話そうか。反射っていうのは——」
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