第5話 説明

「……あ、食べ終わった?じゃあ片付けてくるね。」


食べている間に思ったが……反射というのは五感 感情 思考のことを表しているのではなかろうか?


反射の共有とやらをした結果が今の状態なのだから、この推察は正しいように思える。


では独反射とは一人の五感 感情 思考のことで……群反射は複数人の五感 感情 思考……それはつまりどういうことだ?


良い線は行っていると思ったが……まだ分からないことが多すぎる。そもそも私の思考が読まれているのは反射の共有とやらをしたせいなのか?


何かそういう魔法を使われた可能性も……学校ではそのような魔法は存在しないと習ったはずだが、そもそもこんな状況になっている時点で常識など通用しないだろう。


「色々考えてるみたいだね〜。」


エルトリアが戻ってきた。


「ん〜反射について説明しても別に良いんだけど……とりあえずその足枷外しちゃわない?」


「……良いの?」


「うん。別に必要ないし。どうせ足が動いてもここから出られないからね。」


「それは……まぁ足が動くに越したことはないわね。外してくれる?」


「了解!待ってね……鍵が確かこの辺に……」


……足枷を外されるとは思わなかった。足が動くのなら何かしら行動が広がる。脱出して警察か何かに駆け込むことも可能だろう。


「あっ、あったあった。外しちゃうね〜。あと警察に駆け込んでもネイちゃんのことは認識出来ないから無駄だよ。」


「認識出来ない……そういえば少し前にも似たようなことを言っていたわね。」


「それは群反射からネイちゃんの独反射を隔離したからなんだけど……まぁ聞いても意味わかんないでしょ?」


群反射から独反射の隔離をしたから認識されない……。さっぱり分からないが、推測は出来る。


独反射というのは恐らく私の五感 感情 思考のことだ。これが群反射から隔離されている。


群反射とは……他者の五感 感情 思考のことか?


……いや、元々は群反射の中に私も居たということのはずだ。そうならば、群反射とは全員の五感 感情 思考?


いや、そもそも何故五感 感情 思考のことを反射と呼んでいる?反射と呼ばれる程の何かがあるはずだ。


……分からない。


「ん〜結構良い線は行ってるね。群反射と独反射の解釈は概ねその通りなんだけど……やっぱり反射って意味わかんないよね。」


「……頼めば説明してくれるのかしら?反射について。」


「別に良いんだけど……説明が難しくってね……何と言えば良いのか……」


「ゆっくりでも分かりにくくても構わないから説明してくれないかしら?」


「う〜ん……ちょっと言葉をまとめさせてね……そうだなぁ……」


……かなり根幹の情報である気がするが、本当に良いのだろうか?


……無論嘘をつく可能性もある。全て鵜呑みにするのは危険だろう。しかし……これ以上考えたところで分からない気もする。


全てが全て嘘という訳でもないだろう。ある程度は誤魔化されるにしても……少しでも情報を手に入れられるならつかみに行くしかない。


「……そうだね。説明しようか。」


「まず……ネイちゃん。君が信じている世界は全て真っ赤な嘘。この世界は決して平等なものじゃない。……あぁいや、努力が報われないとかそんな意味じゃなくてね。」


「この世界は人によって見え方形が違う。そして、未来は決定されている。それら全ての理由は反射のせい。」


「ネイちゃんが赤色と思っている物が、他の誰かからしたら青色だったりする。ネイちゃんが何かを決定するとき、それは君が産まれる前から決定されている。」


「この世界の根幹。枠組み。それは群反射から成立していて……それはみんなの独反射の集合から出来ている。」


「この群反射の情報は言わば文字。ある物体に対して色があるとか形があるとかそんなアバウトな文字だけを与えている。そして、そのアバウトな文字はみんなの独反射の平均から出来ている。」


「対して独反射は絵のようなもの。色があると与えられた物体に、実際に色をつけるのは独反射の役割。そして、この色は群反射にある平均化された色と、その独反射の過去 現在 未来から出来ている。」


「そもそも反射というのはこの世界を作っているもの。世界は過去 現在 未来から来た情報の反射で作られている。そしてそれは世界のみならず我々自身にも当てはめられる。我々の脳内でその情報の反射が行われていて、それを元に全ての行動や思考が発生している。」


「我々の脳内にある反射は群反射から来ていて、群反射から来たものを我々が反射し蓄積することで独反射が成立する。群反射が何処から来たのかってのは……鶏が先か卵が先かみたいな話になっちゃうね。」


「それで私達がやったのが——」


「ちょ、ちょっと待ってくれる?一度情報を整理させて。」


「あぁ、良いよ。」


……どこから手をつければ良いのだろうか。


反射はこの世界を作っているもの……群反射は文字で独反射は絵……理解が追いつかない。


「あ〜とりあえず、反射は過去 現在 未来から来た情報で出来ていて、その反射によって世界が作られている。群反射は世界全体を作る。独反射は自分の世界を作る。その認識で良いよ。」


「……分かったわ。ひとまずそう解釈しておくわね。」


「それじゃ話戻すけど……私達はこの独反射……つまりは自分に見える世界だね。それを共有したの。」


「その自分に見える世界ってのは思考とかも含んでいて……私は、この自分に見える世界を大体操れるんだ。例えば……こんな感じで。」


「なっ、これは何が起きているの!?」


突然自分が座っていたベッドが土に変わる。目の前には無数の白い花が咲き誇っている。周りを見渡してもそれは変わらない。


「へぇ……君にはそう映るんだ。私は今花畑が見えるように変えたんだけど、ネイちゃんはこの花畑に思い入れがあるの?」


そう言われてみれば……昔家族と来た百合の花畑に似ている。反射は過去から来ているというのは、こういうことなのだろうか。


「おっ、流石だねネイちゃん。そうだよ。私は群反射として花畑を出した。独反射はネイちゃんの過去から来たんだろうね。それで百合の花畑が最終ネイちゃんに見えた。」


「……なるほど。概ね分かった気がするわ。……いや、この状況は正直まだ飲み込めてないのだけれど……。」


「おろ、そうなの?結構飲み込めてる感じに見えたけど……。」


「……もう訳の分からないことが立て続けに起きたせいで慣れてしまったわ。私でもどうかと思うけれど……。」


「あ〜なんというか……その……ごめん?」


「謝るつもりがあるなら私を解放して欲しいのだけれど……。」


「いや〜一応許可したのはネイちゃんだよ?」


「あれは……まぁ……正直私が悪いわね。好奇心に負けてしまったわ。」


「あっ、景色戻しとくね。それで……そろそろ話戻って良い?」


「あぁ、突然景色が変わったせいで忘れていたわ……続けてちょうだい。」


「おっけ〜。それで、独反射を共有したから景色を変えられるって話だったね。他にも色んなことが出来て……」

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