第2話 僕の美天使は
夕陽が差し込む部屋、黙々と紙にデザインを書きながら、俺は後ろに居る女に淡々と言い放った。
「君、クビ」
「ぇ?な、何でですか!わ、私何か、悪かったですか!?」
「君は俺の作品に合わない、母さんに言っとくから、もう俺所に来ないで」
「鍵だったり、とかはそこに置いといて」
「、、、、、、、、ツな!」
「追い出されたく無かったら、自分で出てけ」
「ツ〜!!分かりました!!!」
大きな声で言い放って、鍵を机に置き部屋を出て行った女。俺は、再び作業に入る。
何回目のモデルのクビ宣言、覚えてはいない。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
ガチャ!!
「
ビクッ
扉が強く開けられる音と、聞き慣れた大きな声に少し驚き、後ろを振り向くと見慣れた般若の顔をした母が居た。母さん、
「何だ、母さんか」
「「何だ、母さんか」じゃないのよ!あの子何で、クビにしたの!」
ガシッ ブンッブンッ
ズカズカと俺の頭部を持って揺らしてくる母。
「だって、あの子は俺の理想の天使じゃない」
「、、、、、、、、はぁ〜、まぁた、んな事言ってんの!これでモデルをクビにするの何回目よ!!?!?」
「、、、、5回目?」
「6回目よ!!」
「私が、自らモデルとして選んであげた子を何で!?」
そうあの子は母さんの推薦、ゴリ押しで【エンジェルデビル】のエンジェルのモデルにさせられた。
「母さん言ったじゃん、俺が気に入らなかったら、いつでもクビにして良いって」
「そう言ったけどね〜!たった1週間でクビにする馬鹿が居るか!」
「良いじゃん。俺に選ぶ権利はあるし、俺が認めた天使しかモデルにしない」
「、、、、はぁー、本当、アンタの感性が謎だわ」
「別に母さんには関係な、ヘブッ 」
そう言うと、母さんは俺の両頬を摘み、大きな声を出す。
「関係大アリよ!!アンタが連続でモデルをクビにして、いちいち選ぶ私の事を考えなさいよ!」
「りゃって、 「だってもクソもないわよ!次、クビにしたら、容赦ないからね!」 わっ」
そう断言して、部屋から出ていく母。俺はそれを横目に、再びデザインを描いて行く。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
それが、1週間前の出来事。
「千尋、この子知ってる?」
今日も今日とて、俺の部屋に居る母さんは俺にスマホをかざして画面を見せた。
「何?興味な 「良いから」 ム 分かったよ」
「俺、忙し、、、、、、、、何この子」
俺は興味ないが嫌々見た、そこに写っていた笑顔が可愛い天使に心を奪われてしまった。
「アンタのブランドのエンジェルデビルのエンジェル派みたいよ。毎月の新作が出るたびにこうやって配信してるのよ」
「結構人気のインフルエンサーで、アンタのブランドの古参らしいわ」
「名前は?」
「え?確か、あ、
「何?もしかしてアンタ、この子の事」
俺は美咲の顔そして、俺の服を完璧に着こなすこの子を見て、心の臓がドクッドクッといつもより心拍が速くなっている事に気づく。久しぶりのこの感情、この子を俺の物にしたい。この子に俺の服で埋め尽くしたい。それだけが脳を一瞬で埋め尽くした。
「俺の美咲、美しい、、、、美天使、、、、この子だ。俺が探してた美天使はこの子だ!」
「うるさ、まぁ、アンタ好みのモデルが見つけれたのなら良いけど」
「本当、見つからなかったら
「心愛はデビルのモデルだ。あの子は可愛いが天使より小悪魔の方が似合う」
「まぁ、それは否定はしないわ。とりあえず、私からこの子にアプローチしてみるから」
「じゃ、また明日」
「うん、お願い」
俺はそう言って作業を中断し、急いでスマホで美咲のアカウントを検索して配信を見た。すると美咲はコメント読みを行なっていた。だから、俺はあるコメントを書いた。
「えっと、『アンチコメや誹謗中傷とはどういう物だと思いますか?』と、よし」
コメントをすると、すぐに目が入ったのか一瞬、ビックリした顔をしたあと、真剣な顔で答えてくれた。
「っ、次は、『アンチコメや誹謗中傷とはどういう物だと思いますか?』それは、ん〜、やっぱ嫌だけど、僕はこんな考えがあるんだよね〜。ちょっと、と言うか結構長くなるけど、聞いてね」
「アンチや誹謗中傷をしてる人って、その人の全てを知らないのに、その人を傷つけてるじゃん?その人の好きな物、過去の出来事、嫌いな物や得意な事、今ハマってる物を知らない。全てを知らないのに平気で傷つける。
その人がどんな人生を送ってどんな過去を送ったかも知らずに、その人の全てを否定したり、傷つけたりする人は僕は嫌い。『自分がされて嫌な事をするといつか自分に返ってくる』この言葉を僕は心に刻んでる」
「あとは、アンチをしたりするのって、アンチする人を羨んでるって事だったりするよね笑、自分より優れていて、自分より凄い人が少し失敗したり変な事したら、ここぞとばかりにアンチとかする。自分じゃ勝てないからって、ネットって言う所で芸能人やインフルエンサーをストレス発散の道具にして良いって訳じゃない。誹謗中傷はイジメと何ら変わらない行為だから」
「ネットに何を投稿したって別に良いよ?でも、人を傷つけて自分が喜んだり、自分だけが悦に浸る様な事だけはしちゃダメ。と、言うか現実では言えないのに、ネットって言う開放的で意味良いで誰にでも見られる所だから、言う奴らって、一言で言えば笑、根性のない馬鹿だよね?だってさ、SNSとかで誹謗中傷した所で、アカウントの主の情報開示請求とか、出来る時代だし、そもそも捨て垢だから大丈夫だから、誹謗中傷してる奴らも奴らだしね。自分の快楽の為とか腐った言い訳や悪い事したらとか自分には関係ない事なのにそれで、人を傷つけて良い事にはならない」
「それに、努力をしてる人やその仕事や趣味を大切、頑張っている人を貶したり、傷つけたり、その人が不倫をしたり、浮気したりしてても、それはお前らに関係あるのかって、言いたい。浮気をしたのはその人で、お前はされた側でもなんでない他人だろ?何が「サイテー、死ねば良いのに」とか「応援してたけど、辞めます」とか言ってるけど、それをわざわざ、SNSと言う誰でも見られるところに投稿する人って馬鹿」
「あとは、悪い事したとかニュースとかでやってて、SNSで叩きまくって、いざ悪い事してなかったってなったら、手のひら返しで、「俺はそう思ってた。信じてた!」とか「〇〇君が、そう言う事する人じゃないって私は知ってる!」とか書き込むよね笑」
「まぁ、ぁ、他にはアイドルの熱愛が出たら、アンチとか誹謗中傷してる奴らに言いたいけどお前らは今まで、推しにどんだけ幸せを貰ってきたの?アイドルはファンからの応援や推して貰う事で、幸せを貰ってる。なのに、ファンであるお前らが推しを傷つけてはいけないよね?中には「裏切られた!」や「ファンが1番じゃないの!?」とか「ファンを大事にしてよ!」とか「私の〇〇君はそんな事しない!」言ってるけど、それってお前らはアイドルのプライベートまで、完璧にしたいの?人間誰しも、完璧な人間なんていない。そもそも、アイドルに恋愛をし辛くさせてんのは、お前ら。プライベートはアイドルじゃなくてただの、人間。それを、忘れないで。あとは、私の〜とか、僕の〜とか言ってるけど、お前らのじゃないし、そんな事はしない!とか、言ってるけど、それってお前の妄想上の推しだろ?現実の推しじゃねーだろ?現実の推しを妄想上の推しと重ねるなよ?、自分の考えてた推しと違う言動をしただけで失望したり、ショックすんな!むしろ、推しの新たな一面が見れたって、事で良くね?って僕はそう思うな笑」
「ツ (泣)」
美咲の言葉に俺は気付けば、泣いていた。俺は、この言葉でもっとこの子じゃないと、俺の天使、美天使にはなれないんだ。そう、確信を持った。
「早く、、、、早く、この
まさか、この言葉が本当に叶うなんて、美咲に合うデザインを描いていた俺はまだ知らない。叶うまで、約20時間後、、、、
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
約18時間後
ヒョコッ
「千尋〜、先生がデザイン提出しろ〜って、出来てる?」
大学の服飾デザイン部の部室の一角で黙々とデザインを描いていたら、聞き慣れた透き通った声が聞こえて、後ろを振り返る。
「、、、、
「ん、ぁ、今月の新作良かった。さすが」
「ありがと、玲哉の新作も楽しみにしとく」
「はーい」
そう言って部屋から離れて行ったのは、俺の幼稚園からの幼馴染で同い年の
俺は再び、作業に取り掛かり、時間を忘れるぐらい描いていく。
・
・
・
2時間後
カタンッ
「?、、、、《何の音?》」
黙々と作業をして、1つのデザインが終わり気を抜けていた時、後ろの部屋の扉付近から何かが当たる音がかすかに聞こえた。
俺は気になって後ろを振り向くと、そこには、
「?誰、?」
「ぁ、えっと〜」
離れたところからでも分かるぐらい困惑と緊張している小柄でリュックを背負った男子高校生が立っていた。俺は立ち上がって、高校生のそばへと歩く。何故なら、俺が1番に気がかりな事は、
「す、すいません!覗き見する気は、なかったんですが!」
「、、、、、、、、!(この声質に、あの体格、顔もあの子と同じ、)」
「、、、、あの?」
黙っている俺に不思議そうに声をかけてくる高校生。俺は、咄嗟に誤魔化して、確信を得るために質問をした。
「、!いや、別に大丈夫。、、、、その、君ってさ、
「、、、、、、、、!?」
「な、何で?!」
俺がそう言うと一瞬で顔を驚きの表情で埋め尽くしたあと肯定する様な言葉を言い、両手で顔を覆った。この反応は正解としか、ありえない。俺はすぐに美咲の近づき高校生の両手を掴んで、こう言った。
「俺の
「、、、、、、、、////// はぁぁぁ〜!!?!?」
そう言うと美咲は一瞬の沈黙の後、顔を真っ赤にして声を大きく出した。俺はそんな美咲に構わずに部室に置いてある鞄とタブレットを持ち、美咲の手を掴んで俺の実家兼事務所に向かった。
この間、美咲はずっと何が起こったのか分からない顔をしていた。
着飾る恋は必要ないらしい 橋本衣 @yuitakahasi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。着飾る恋は必要ないらしいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます