寝室にて……。

第14話

夜の支度のあと、いつもと違う部屋に通された、セイラの部屋よりも大きい部屋だ。


「わ、だだっ広い部屋~」


セイラの部屋とは違い、白と紺碧とアンティークの金が特徴的な部屋だった。


キングサイズのベッドを見たとき、セイラは困惑した。脳内を何度かモザイクが通過した。セイラは婆やの話を思い出していたのだ。


「……うん。大丈夫よね。まだ」


夜九時頃まで本を読もうかと思ったが、本棚を見るとタイトルが小難しい。何冊か開いてペラペラめくったが、読むのは諦めてベッドに座る。

小説を持ってくればよかったなとぼんやり考える。


「昨日はあまり寝られなかったのよね」

婆やの話を一生懸命思い出そうとして、内容を思い出したら余計に寝られなくなった。


「ちょっとだけ横になろう」




それから次に目が覚めたら夜十一時三十六分。イェルガーはまだいないと思ったら、奥にある扉から光がもれていた。書斎のような小部屋で机に向かい何か書いていた。


「イェルガー?」

「起きたか」


イェルガーをじっと見る。


「寝ないの?」

「まだな。セイラはもう寝ていいぞ」

「さっき起きたばかりだから寝られなくなった」

「そうか、向こうで少し待っていろ」


しばらく沈黙が流れるが、嫌ではない。慣れてしまったとでも言おうか。

ベッドの上に戻り、背もたれに寄りかかった。クッションが四つあったので一つを抱き締める。


イェルガーが横に来る。


右手を捕まれる。握られた手が親指で何度か撫でられる。

セイラは緊張して言葉が出なくなっていた。

イェルガーが寝ころがる。


「……」

「イェルガー?」

呼んでも反応はない、耳を近づける。

すーすー寝息が聞こえる。どうやら速効で眠ったらしい。


覚悟とはなんだったのか、セイラは安堵しながら長い息を吐いた。

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