背中の傷
第13話
それからしばらくは、子どもの頃の話、家族の話、嫌いな人の話などをした。
そろそろ話が尽きてきた頃。
「背中の傷を見せてくれないか?」
唐突にそんな話になった。セイラには事故で頭と背中に傷がある。
「良いけど、そんなものを見てどうするの?」
「ただの確認だ」
セイラはイェルガーに背を向けて服の前のボタンを外しはじめた。
背中には首のつけ根から肩甲骨の辺りまで傷があった。そこだけ色が違う。
頭の傷は髪の毛で隠れるが背中の傷は大きかった。
長い髪の毛を前に移動させる。
「なんの確認なの?」
「大事なことだ。触っても良いか?」
セイラにはよくわからなかったけれど大事らしい。ため息をつきたくなった。
「……どうぞ」
イェルガーは少しずつ触れてきた。傷をそっと撫でるように何か確かめていた。
「んふ、ちょっと! くすぐったい!」
セイラが怒ると、離れた。変な声出た、恥ずかしい。
「もう大丈夫だ」
その言葉でセイラは素早く服を着た。
「なんなの?」
いぶかしみを込めた目で見る。
「想像していた程、酷いものではないな」
「どんな想像してたの、怖っ!」
「主治医の許可がおりた」
「許可が?」
「寝室が明日から一緒になる」
セイラはなんとなくわかった。
「覚悟しておけ」と言う捨てゼリフを残して戻って行った。
夜十時一分セイラは震えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます