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次の違和感が襲ってきていた。どうしてこうも頭が回らないのか。千里はそれを半ば楽しんでいるつもりであり、自分自身を心理や精神の実験体にするという寄行につき、愉快愉快と感じているつもりであった。

 しかし、家に帰ってしばらくした時、千里は吐き気を自覚した。何故だろう。体調が悪い。百万円を故意に散財するという、世にもヘンテコな事をしているからなのか。精神に僅かな傷ができたか?心因性の体調不良だろうか。

 いやいやそうとも限らない。単純に寿司を食いすぎたとか、何かで腹を壊した可能性も否定はされていない。

「なんだろう……」

 分からないということ、不明、明らかでないとう状況は大きな損害を産みうる。しかし同時に、直接的な害ではない、感情的な影響も生む。

 それは、恐怖だ。怖いという感情だ。

 そこからというもの、千里はベッドに寝転がり、輝かしい一人暮らしは堕落の一途を辿った。

 百万円は、一瞬だった。愉快に実験をするまでも無く、半自動的に無くなった。

 何に消えたか。大分するとこうだ。

 食費、つまり出前やそれに類ずるもの。次に、インターネット課金。動画サービスのサブスクリプションや、それに類ずるもの。

 薬は、買っていない。掃除も、していない。本質が、見えていない。現実が、見えていない。

 見えて、いない?

「あっ!」

 千里は飛び起きた。その頃にはもう、昼夜の感覚も曖昧になっていたが、その時の千里は頭が冴えていた。

 目が、悪いんだ。自分は。考えてみれば、常に視界がぼやけていた。それが当たり前になっていた。

 気付かなかった。でももう大丈夫。千里は携帯の連絡先を漁った。

 明日、休みであろう知り合いは……

 電話をかける。問題解決はとことん万全にやった方がいい。

「もしもし?お久しぶり」

 眼鏡を、買いに行こう。そしてそのついでに。

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