1-6 処理速度
次の違和感が襲ってきていた。どうしてこうも頭が回らないのか。千里はそれを半ば楽しんでいるつもりであり、自分自身を心理や精神の実験体にするという寄行につき、愉快愉快と感じているつもりであった。
しかし、家に帰ってしばらくした時、千里は吐き気を自覚した。何故だろう。体調が悪い。百万円を故意に散財するという、世にもヘンテコな事をしているからなのか。精神に僅かな傷ができたか?心因性の体調不良だろうか。
いやいやそうとも限らない。単純に寿司を食いすぎたとか、何かで腹を壊した可能性も否定はされていない。
「なんだろう……」
分からないということ、不明、明らかでないとう状況は大きな損害を産みうる。しかし同時に、直接的な害ではない、感情的な影響も生む。
それは、恐怖だ。怖いという感情だ。
そこからというもの、千里はベッドに寝転がり、輝かしい一人暮らしは堕落の一途を辿った。
百万円は、一瞬だった。愉快に実験をするまでも無く、半自動的に無くなった。
何に消えたか。大分するとこうだ。
食費、つまり出前やそれに類ずるもの。次に、インターネット課金。動画サービスのサブスクリプションや、それに類ずるもの。
薬は、買っていない。掃除も、していない。本質が、見えていない。現実が、見えていない。
見えて、いない?
「あっ!」
千里は飛び起きた。その頃にはもう、昼夜の感覚も曖昧になっていたが、その時の千里は頭が冴えていた。
目が、悪いんだ。自分は。考えてみれば、常に視界がぼやけていた。それが当たり前になっていた。
気付かなかった。でももう大丈夫。千里は携帯の連絡先を漁った。
明日、休みであろう知り合いは……
電話をかける。問題解決はとことん万全にやった方がいい。
「もしもし?お久しぶり」
眼鏡を、買いに行こう。そしてそのついでに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます