1-4 ディスレクシア
図書館で本を読んだ。が、なんだかあまり頭に入ってこなかった。しかし千里は、経験より飽くまで知識として、集中する気を失くすとますます集中力が無くなる事を知っていた。病は気からというやつだ。本当に、この半月や一ヶ月で、自分の精神や体力はどれだけ消耗しているのか。それを生々しくも思い知らされた。それにつき千里は、半ば面白がっていた。ソシオパス。後天的な感情の障害。しかし、だとしても、その壁、障壁を果敢に乗り越えて生きるのもまた面白い。千里は父から愛されて育った。大切にされて、過保護と言うべきかギリギリな所で、生きるのに役立つスキルを叩き込まれた。で、あれば、多少の失敗、部分的な障害など、生じていたところで大した問題には当たらない。
「そうなのさ」
思いのままに、生きればいい。何しろ四千万あるのだから。
「なんでもできる」
それはきっと思い上がりだろう。しかし、半分くらいは事実な訳だから、声に出してみると本当にそんな気がしてくる。自分がそういう、些細なバグを起こしている時、修正する事が即座にできなかったとしても、そのバグの事実をメタ的に認識する事ができれば、かなり心は楽なものなのだ。
考え事をしては、頑張って本に視線を戻し。そして千里は、伝記ものの漫画本を、頑張って一冊読み終えた。
「うん」
寿司が食いたい。急にそんな気がしてきた。空腹を感じたのは事実だ。そこに付け加えて言うとしたら、百万円をとりあえず散財してみようと実験を思い立った千里が、金のかかる食い物を考えて思い付いたのが寿司だったという訳だ。
考えてみれば、知らない事だらけであった。自分はここらにある寿司屋の中で、味の違いも知らなければ、醤油の銘柄の違いも分かっていなかった。
行ってみよう。心のままに。赴くままに。やりたいように。
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