歓喜と疑心

 ここは美咲のために用意された部屋。周囲には、オレンジ色で可愛い家具やベッドなどなどが置かれていた。見た感じ白とオレンジ色が、マッチしていていい感じである。

 美咲はソファに座り寛いでいた。


「まるで、お姫さまにでもなった気分。これって夢じゃないんだよね」


 そう言いながら、ソファに寝転がる。


(これから、どうなるのかなぁ。早く帰りたい……でも、そんな都合よくいかないよね。だけど、なんで転移したんだろう? それも司と一緒にさぁ。

 できれば宏輝とだと嬉しかったんだけど……あーあ、やだなぁ。司は悪いヤツじゃない、でもねぇ……好みじゃないのよ。って云うか優しすぎる……それが重い)


 そう思いながら天井をみつめた。


 ♧★♧★♧


「なんかシンプルな部屋だな。クローゼットには男性用の着替えが揃ってる。これって着てもいいのか?」


 そう言いながらクローゼットから一着スーツを取り出して、じっくりみている。


「やっぱり、やめておこう。俺には似合わないだろうしな」


 司はそう言うとクローゼットに戻した。


(なんとか死刑は免れた。だけど……なんでこんなに手厚く歓迎されたんだ? なんか気持ち悪い。変な不安が…………思い過ごしならいいんだけどな)


 そう思いながら部屋を歩き回っている。



 ――……三日後……――


 美咲と司は中庭を歩いていた。


「これって庭園って云うんだよね」

「ああ……そうだな。それはそうと美咲……そろそろ城を出ないか?」

「なんで? 闇雲に知らない土地を歩くよりも、ここに残って帰る方法を探した方がいいと思うけど」


 そう美咲が言うと司は首を横に振る。


「本当に帰る方法を探してくれてると思うか?」

「まさか司、疑ってるの?」

「疑ってると云えば……そうなんだろうな。どうしても何かあるんじゃないかって気持ちが落ち着かないんだ」


 それを聞いた美咲は呆れた表情で司をみた。


「考えすぎだって、こんなに良くしてくれてるんだよ。疑うのは違うと思うけどなぁ」

「だからだ。なんで……どこの馬の骨か分からないようなヤツを、こんなに良くしてくれるのか」

「異世界の人間で困っているからでしょ」


 頭を抱え司は何度も首を横に振る。


「普通なら……俺たちの言葉を、すぐに信じられるはずない。異世界の人間だって分かったとしても侵略者かと思うんじゃないのか?」

「……司。映画の観すぎじゃないの?」

「美咲……二次元に浸りきってる、お前に言われると説得力ないんだが」


 そう言い司は半目で美咲をみた。


「それって酷くない? だけど……そうだね。司の言う通り警戒だけはしておいた方がいいか」

「ああ、何を考えているか分からないからな」


 司にそう言われ美咲は頷く。

 そうこう話しながら二人は、そろそろ建物の中へ入ろうとする。

 すると兵士の一人に声をかけられた。

 その兵士は「ボンリぺ様がお呼びですので――……」と二人に伝えたあと持ち場に戻る。

 それを聞いた美咲と司は、ボンリぺが待つ客間へと向かったのだった。

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