談話と龍神祭と油断と
ここは客間だ。それほど大きくはなく周囲に観葉植物などが無作為に置かれている。
そして、ここには美咲と司とボンリぺが居てソファに座り話をしていた。
テーブルの上には、この世界のケーキに似たデザートやお菓子に温かいお茶が置かれている。
それらを美咲と司は話しながら食べたり飲んだりしていた。
「話ってなんですか?」
そう言い司はボンリぺを見据える。
「たいしたことではないのだが。君たちの世界のことについて聞きたいと思ってな」
ボンリぺにそう言われ美咲と司は自分たちの世界のことを話し始めた。
それをボンリぺは興味深く聞いている。
「あれ? なんか……眠く…………なって………………来た……………………だけど…………………………」
美咲はそう言いテーブルに顔を乗せ眠ってしまった。
「美咲!?……って、俺…………も………………」
そう言いかけ司も、バタンっと寝てしまう。
「フゥー……やっと寝たか。さて、急がなければな」
ボンリぺは立ち上がると扉の所に待機させていた兵士を呼んだ。そして、その兵士に「手はず通り拘束したら部屋に連れて行き見張れ」と指示を出した。
それを聞き兵士は、その指示の通り行い司を担ぎ部屋から出ていく。
ボンリぺは兵士が出ていくのを確認すると美咲を拘束せずに、そのまま抱きかかえ部屋をでる。
♧★♧★♧
場所は変わり、ファスリア城の北東に位置する山。その山の麓だ。
ここには祭壇があり二人の兵士が龍神祭の準備をしていた。
「なあ……今年は異世界の女が生贄になるらしいぞ」
「そうみたいだな。まあ、オレ達には関係ない。ただ上の指示の通り、やるだけ」
「ああ、嫌なこともあるが……金のためだしな」
そう言いながら二人は、お供え物などの準備を整え終える。
丁度そこに美咲を抱きかかえたボンリぺが数名の兵士を引き連れ姿をみせた。
それをみた二人の兵士は緊張気味で立ち一礼する。
「準備はできたのか?」
「ボンリぺ様、既に準備は整っております」
そう兵士の一人が言うとボンリぺは祭壇へと歩み寄った。そして美咲を祭壇に寝かせる。
その後ボンリぺは兵士たちに、この場から立ち去るように指示を出した。
それを聞いた兵士たちは一礼をしたあと山から下りる。
それを確認するとボンリぺは空を見上げた。
「さてと、やるか……」
そう言い懐から竜の角笛を取りだす。その後、空へ目掛け竜の角笛を吹いた。
――……キュルルルルゥゥゥー……――
そう鳴り響くと先程まで晴天だったはずの空が暗くなりはじめる。そして黒い雲が、モクモクと広がりだした。
――ギャオォォオオオーン……――
と雄叫びが響き渡る。
それを聞いたボンリぺは急ぎその場を離れた。
♧★♧★♧
ここはファスリア城の司の部屋。
あれから司は兵士により、この部屋に連れてこられベッドに寝かされる。
この部屋の外には二人の兵士が見張っていた。
「んー…………う、うー……ん?」
司は眠い瞼を徐々に開いていく……。
(あれ? なんで俺は、こんな所で寝ているんだ)
そう思いながら自分が今おかれている状況を確認する。
(縄で縛られている。じゃあ……あのデザートとかに眠り薬が)
そうこう思考を巡らせていると部屋の外から声が聞こえてきた。
「おい、そろそろか龍神祭が始まるのって」
「ああ、今年はこの国の女が犠牲にならずにすんだ」
「そうだな。まあ、あの異世界の女には申し訳ないけど……これも運がなかったと諦めてもらうしかないだろう」
そう話す二人の兵士の声が聞こえ司の顔は青ざめる。
(美咲!? このままじゃ龍神の餌にされる。早く助けないと……)
そう思い司は縄を解こうとするも頑丈に縛られていて無理だ。
(クソッ……油断さえしなければ……美咲――……)
悔しく思いながら司は、なんとか縄を解く方法がないかと考えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます