王との面談と策略

 ここは謁見の間。玉座にはこの国の王が座り、その左側に大臣がいる。


 王の名はグウルゼ・R・ファスリアと言い大臣の名がボンリぺ・アルザンだ。


 室内は、それほど広くはない。煌びやかな宝石が施された置物が所々に飾られている。そして色々な植物が数ヶ所に置かれていた。

 兵士は美咲と司を王の前まで連れてくると一礼をし少し離れた位置に移動する。

 それを確認した王は口を開いた。


「余はグウルゼ・R・ファスリアである。して……お前たちは何者だ?」


 そう言いグウルゼは美咲と司を疑いの目でみる。


「俺は久遠司と言います」

「あ、私は龍凪美咲です」


 そう自己紹介をするとグウルゼは難しい顔をし考え込んだ。


「……変わった名前だな」

「陛下……もしかしたら異世界の者なのではありませんか?」

「なるほど、かつてにも迷い込んだという事を聞いている」


 グウルゼはそう言い美咲と司をみた。


「昔もって……私たちみたいにですか?」

「うむ、そうなるな。リュウナギミサキと云ったか歳はいくつだ?」

「十七歳ですけど……呼ぶときは美咲で大丈夫です」


 それを聞いたグウルゼとボンリぺは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「俺も司でいいです。それで、ここは何処なんですか?」

「そうか……異世界の者であれば、ここが何処か分からぬのも致し方ない」


 そう言いグウルゼは一呼吸あけ再び口を開いた。


「ここはスルトバイスと云う世界。そしてラファストル国の王都ファスリアだ」

「そうなのかぁ。じゃあ城の名前もファスリアなんですか?」

「ミサキ、そうなりますね」


 そうボンリぺが言うと美咲と司は、なるほどと納得する。


「俺たちは元の世界に帰れるんですか?」

「ツカサ、それは分からぬ。だが極力、帰る方法を探させよう」


 そうグウルゼに言われ美咲と司は「ありがとうございます」と言い頭を下げた。


「うむ……そうだな。帰る方法がみつかるまで、ここに滞在するといいだろう」


 そう言いグウルゼはボンリぺに二人の部屋を用意するように命令する。

 それを聞きボンリぺは近くに居る従者の所に赴き指示をだした。その後、またグウルゼの脇へと戻る。


「今部屋を用意させている。でき次第ゆるりと休むがよいだろう」

「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きたいと思います」


 そう言い司は軽く頭を下げた。

 それを確認するとグウルゼはボンリぺと共に謁見の間を出ていく。

 そのあと美咲と司は従者に案内され待合室へと向かった。


 ♧★♧★♧


 ここは王の書斎。机に向かいグウルゼはボンリぺを見据える。


「ボンリぺ、あのミサキをどう思う?」

「陛下……何を考えておられるのでしょうか?」

「三日後の龍神祭のことをだ」


 それを聞きボンリぺは、なるほどと頷いた。


「そういう事ですか。あのミサキを生贄にと……確かに我が国の女を、これ以上龍神へ差し出すのは限界です」

「うむ……運よく龍神祭の前に、この地へ訪れた」

「ええ、まあミサキにとっては運わるく出しょうが。ですが……我々にとっては好都合」


 そう言いボンリぺは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「そういう事だ。このあとすることは分かっておるな?」

「勿論でございます。では準備を早速いたしたいかと」

「ああ、あとは任せた」


 それを聞きボンリぺは一礼したあと自分の書斎へと向かった。

 グウルゼはそれを確認すると机上の書類へ目を通し始める。


 ♧★♧★♧


 ここは待合室だ。

 美咲と司は長椅子に座り待機していた。


「なんか思ってたよりも手厚く招かれたね」

「ああ……一時はどうなるかと思ったけどな」

「うん、でも本当に元の世界に帰れるのかな?」


 そう言い美咲は俯き不安な顔になる。


「帰れるかじゃない……絶対に帰るんだ」

「そうだね。私は、まだ宏輝に告白できてないし」


 それを聞いた司は複雑な気持ちになっていた。


「……そ、そうだな。俺はプロ野球選手になる夢を諦めたくない」

「あーまだ諦めてないの?」

「当たり前だろ! それよりも美咲だって、いい加減に宏輝のことを諦めて俺にしといた方がいいぞ」


 司は意地悪気味にそう言い美咲を見据える。


「それ絶対にあり得ないからっ!」


 そう言われ司は苦笑した。

 その後、二人の侍女が待合室に入ってくる。

 そして美咲と司は侍女の案内で用意された部屋へと向かった。

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