第2話

気が付くと、僕は客席にいた。

大型ホールの客席。


その中央あたりに僕は座っている。

長い夢をみていたようだ。


今日は、ステージでひとりのアイドルのコンサートが行われる。

アイドルと言うには、もう物足りないか?

彼女は、もう国民的大女優だ。

数多くの賞を受賞している。


そして、今日を最後に世界へとはばたいていく。


舞台に立つ女優は、知らない仲ではない。

つい最近まで、僕の身近にいたクラスメイトの女の子。


ある日、スカウトされて芸能界入りを果たした。


本人は嫌がっていたが、説得に根負けしてデビューを果たす。

当人は少しの間の思い出作りだったらしいが、得てしてそういう子ほど売れるもの。


今では、彼女を知らない人はいない。


「みんな、今日は私の日本での最後のライブに来てくれてありがとう」

歓声が起こる。

「沢山、想い出作っていってね」


その笑顔は眩しい。


つい最近まで、同じ教室で勉強していたとは思えない。

もう、遠い世界の存在なのだ。


そして、ライブもクライマックスに差し掛かろうとしたとき、僕は席を立ち外へ出る。

空には満点の星空があった。

都会でここまで観られるのは珍しい。


「元気でね」


その言葉を残し、僕は夜の街へと消えた。

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