やっと、ラブとコメディーの開始だ

二年生になってから一週間が経っていた。一週間経ったクラスの雰囲気はとても良くみんな仲が良くなっていた。

 

 まあ、よかったと言ってもいいのかは分からない。二年生になってから早百合たちとは疎遠になっていた。もちろん早百合たちとは喧嘩はしていない。ただ、関わる機会が減っていた。

 早百合たちは新しい友達ができたりなどの変化が起きている。それで、俺はどうなのかって話になるがそれは何もいえることは無い。うん、本当に何もない。

 ただ、今はこうする期間だと考えている。俺がもし誰かと付き合ってしまった場合、みんなとの関わる機会は本当に少なくなってしまうから。

 

 俺は、背もたれに背中を預けて教室を見渡す。平和だな。

 

 昨日から俺が生徒会長になったのだが、あまりにもすることがなかった。思いのほか忙しくなく暇を持て余している。今日は何し――

 その時だった。嫌でも聞こえてくる話し声に耳が反応する。

 

「早百合って拓哉と付き合ってるの?」

 

 早百合の席を囲み、楽しそうにワイワイ話していた女子が急に話の話題を変える。

 

「え、えーと?」

 

「拓哉と早百合って部活一緒じゃん? それに前、神社で早百合と拓哉が一緒に歩いてるの見たっていう人がいてさ、気になったの!!」

 女子は悪いことだと一ミリも思っている感じはしなく、ただ気になっていることを訊いているようだった。


 早百合は表の顔で接しているので笑顔で困った顔を浮かべる。数秒程固まって、優しい口調で言う。

 

「付き合ってないよ」

 

「そうだよね!! だって、拓哉と早百合ってなんか合わないよね」

 

「それは、どういう意味?」

 

 早百合は怒りが混じった声で言う。

 

「だって、拓哉ってあんまりイケメンじゃないじゃん?」

 

 うす笑いを浮かべながら言う女子に早百合は机の下で手をに力をいれる。

 

 あのー全部俺に聞こえてますよ?! いや、イケメンじゃないのは理解しているけど、本人が居るのによく言えるな?! 最近の女子高校生は本人の前で悪口を言うのが流行なのか?

 しかも、チラチラ俺を見ているし、完全に嫌がらせですよ。

 

「それに、拓哉って性格悪そうじゃん?」

 

 さっきまで平和だと思っていたけど違うな、平和だと勘違いしていた。

 

 女子は完全に嫌がらせのように大きな声で言う。成瀬や琴音も志保も、みんなに聞こえるほど大きな声で。でも、その女子は悪いとは一切思っていなそうに喋り続ける。

 

「それにさ、早百合って美人じゃん? だから絶対拓哉なんかと合わないと思うんだよね」

 

 腕を組み、可愛い仕草をしながら言う。

 

 おいおい、流石に言い過ぎじゃないか? いや、俺だって自分が早百合と仲が良いのは奇跡だと思うけどなんで他人に言われないといけないんだ?


 拓哉も怒りを感じていたが、それより怒りを感じていたのは早百合だった。早百合は一年生の時の自分を思い出していた。




 早百合視点。

 

「それに、拓哉って性格悪そうじゃん?」

 

 突然変わった話題に困惑していた早百合はぼんやりと頭の中で考えていた。

 

 なんで、そんな酷いことを言えるの? 好きな人を馬鹿にしないでよ。今ここで好きって言ったら拓哉が困ってしまう。だから、言えない。

 拓哉は性格なんて悪くない、いつも優しく誰にでも手を指し伸ばしてくれる優しい人なの。どうして知りもしな――

 そうだった、私も最初はそうだったんだ。写真を見て拓哉を嫌った。真実を知ろうとせずに、この人が言ってるのって過去の私と同じじゃん。

 早百合は過去を思い出し、下を向く。

 

 今、拓哉はどんな顔をしてるのかな。横を向いたらすぐにわかるのに向けないよ。気にしてない顔をしていたらどうしよう。悲しんでたらどうしよう。そんな不安が大きいよ。

 

「それにさ、早百合って美人じゃん? だから絶対拓哉なんかと合わないと思うんだよね」

 

 もう、やめてよ。どうして、応援できないの? 誰が合わないって決めたの? 誰が拓哉と付き合うのを禁止にしたの? なんで他人なのにそこまで気にするの?

 

 好きな人を馬鹿にされるのってこんなに辛いんだ。泣きそうになっている顔を隠すため下を向き続ける。こんなに好きなのに好きって言えないよ。言ったら迷惑なるし、拓哉にヘイトが向いてしまう。バカでもわかる。もし、拓哉が好きって言ったら変な噂が流れてしまうことくらい私でもわかる。

 

 この状況はどうしたら良いの? なんて言うのが正解なの? 助けてよ。

 

 早百合は自分の力のなさ、恐怖不安感が溢れるように目に雨を見せる。




 拓哉視点。

 

 はぁ、この状況をどするか。この席から見える早百合は泣きそうになっている。平和ボケしていた俺を現実に戻すかのように女子は俺を見つめる。

 

 まだ、二年生になってから一週間ですよ? それになにこの状況になるってどうなってるんだよ。

 

 てか、他人が口を出す内容じゃないだろ。その人がどんな恋をするとか他人が決めることじゃないし、それを決めようとするやつは嫌われるぞ。

 

「あのー聞こえてますよ?」

 

 拓哉の声にびっくりし大きく体を動かす女子たち。

 

 拓哉の一言で教室の雰囲気は大きく換わる。明るい雰囲気が急に重たくなる。

 

 なんか俺のせいで雰囲気重たくなってね? 何故か俺が悪者みたいな雰囲気出すなよ。

 

「そうだ!!! 拓哉って早百合こと好きなの?」

 

 女子は馬鹿にしている声で言う。

 

 こいつ、性格悪いだろ絶対に。

 

 拓哉は格好つけるように足を組み、満面な笑みを浮かべながら言った。

 

「好きだな」

 

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