あの日起きた出来事をまだ君たちは知らない
生徒会室には14名で話し合いが行われていた。
「成瀬と志保はいつの間にテスト受けたんだ?」
「あー生徒会長からテストを受けてもらうって言われたんだ。だから、お前と同じじゃね」
「私も、同じ」
「それで二人とも解けたんだな」
「まあな、10教科で500点だったから良かったけど、相当難しかったよ」
「だよね、私もぎりぎり」
あれ、俺が間違っていたってことなのか。
「普通に解いたのか?」
「そうだよ」
「でも、お前が生徒会長に決まったのか」
冗談であってくれ、てか冗談だよな。
「いやいや、冗談でしょ。てか俺が生徒会長になったら生徒居なくなっちゃうから」
俺の冗談に笑う二人。
「じゃあ、本題と行こうか」
凜先輩が言う。
生徒会室に集まったのは何か話し合いがあるからだろう。
「真治拓哉、君の噂をどうするかだよ」
このメンツで話すことじゃないよーだって早百合もいるし一番気まずいでしょ。
「あの日何があったのか教えて欲しい、君が相馬を殴っている動画が出回っている」
「分かりました」
俺は動画を再生した。
改めて聞くと最低なことばかり言っていた。
「志保ごめんな」
「大丈夫よ」
ニッコリと笑う彼女はまるで天使だった。
「君は優しいな」
凜が言う。いや、まさか褒めてもらえるなんて。
「けど、一度広まってしまったら消すことはできないから、どうやるべきか」
「みんなの記憶を消すとか」
凜先輩の横に座る、咲が言う。
「そんなことできると思うか? 咲」
なんだよ、この幸せな会話。
「えーえーごめん」
うん、許そう。
「本当にどうするべきか」
筋肉質な男、拓馬が言う。
意見を出し合ったが、まともな意見はでなかった。
「まあ、俺は今のままで大丈夫だよ」
「しかし」
悲しい顔をしている凜。
大丈夫、生徒会のメンバーもいるし志保と、成瀬もいる。
「嘘ね」
今まで静かだった早百合が声を上げる
「何が嘘なんだい? 早百合」
凜先輩が聞く。
「彼は嘘をついていますよ」
「おい、またお前かよ」
成瀬が言う
「みんな、騙されているんですよ」
大きい声で早百合は言う。
早百合は、相馬に騙されている。もしかしたら今なら誤解が解けるかもしれない。
「何に騙されているんだよ」
成瀬がすこし怒り気味で言う。
俺には心当たりがなかった。いったい相馬は早百合に何を吹き込んだんだ。
「真治拓哉は、人を一人殺しかけています」
違う、違う、違う、やめて、やめて、だめだ、言うな、それは言ってはいけない、お願い...
次の瞬間成瀬は立ち上がり早百合の胸倉を掴んだ。
「お前、お前、聞いたのか。相馬から。それを聞いてその話を信じたと、ふざけるな、拓哉を、拓哉を信じろよ」
今にも殴りそうになっていた。志保や他の人たちが成瀬を止める。
「お前は、最低だ、あの時のことを知りもしないで、本人から聞いてもないのに、その話を信じて、本人の前で言う。お前はクズだ、正真正銘のクズだ。お前は拓哉のなにを知ってるんだよ、クズが、クズ」
なんともいえない表情を浮かべる早百合。そんなことをお構いなしに成瀬は言う。
「都合が悪くなったら喋らないのか? お前が天使? 笑わすなよ。人のことを見下して
るクズ人間だよ。二度と、拓哉に近づくなよ」
「あの話を本当だと思ったの、証拠も見せてもらった。」
「は? 証拠って、おい、まさか、あいつ、どんだけクズなんだよ、ふっ殺す」
「落ち着け、成瀬」
凜先輩が成瀬に言う。
だめだ、思い出すな。忘れるんだ。頼む、頼む、忘れてくれ、自然と涙が流れる。俺は次の瞬間倒れた。
ああ、忘れていたのに。ああ、ああ、ああ、ああ、消えたい。
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