両想いの確率は解けることができない
「好き」
と言う言葉はどれほど素晴らしいのでしょうか。
恋は人を変えてしまう。人を強くする。
あの子のことをばかり考えてしまうなどの弊害があるけど恋愛は素晴らしい。ただ恋は両想いだけが叶うがな。
両想いの確率は知っているだろうか? 結論、存在しない。理由は至ってシンプル数字がないからだ。
つまり形や物に表すことができないのが恋愛だ。
心が大切ってことだな。そんな事を考えている俺は、危機的状況にいる。俺の部屋で四角形になりながら話し合いが行われていた。
「つまり、振られたと」
「そうなんです。けど新しい恋が生まれました」
え、いくら何でも早すぎない?流石に。
「私聞きたいんだけど、どうしてキスをしたの?」
小百合は優しい表情を浮かべながら言う。
絶対怒ってるよ。
「なんか、運命を感じちゃって。だって好きだと想う心はどんな怪盗団でも盗めませんよ」
俺の関わる人はどこかしら天然なのか。思わず笑ってしまうほどに天然だ。
「なに笑ってるのですか? 私の好きな人」
球速180ありますこの人。
「ところで、あんな楽しそうだったのに何があったの?」
「浮気されたんです。私が罠を仕掛けたら自白しました」
へー嘘だな。俺は知っているあの男は性格がいいと。
うちの中学の先輩だった。
生徒会のメンバーだったため仲良くなった。
けど、俺は受験勉強で疎遠になってしまった。
「それで、悲しくなってフラフラしていました」
「今日は二人とも帰ってくれないか? 純恋と小百合。俺は、この人と話したいことがあるから」
「無理。何をするかわかりませんから」
「近くに食べ放題パフェができたから、俺の奢りで食べ放題パフェ行こう思ってたのに」
「わかったよ」
「わかったわ」
ありがとうパフェ、さようなら貯金。
二人を玄関まで見送り部屋に戻った。
部屋に戻ると、あら、すごい。
さっきまでの座り方と違っていた。どこかぎこちなく彼女らしくなかった。
「それで目的は何なんだ?」
「邪魔された。最悪マジで」
変わりすぎじゃない? てか俺の高校は性格が変わるのが入学条件なのかな。
「はあ、マジで本当にマジで最悪」
怖いよ、怖いよー。
「じゃ、本題に移ろうか、何が目的なの」
「ねえ、あの二人のどっちが好きなの?」
どんな質問だよ。
「そうだな、お前かな」
「し、ね」
「ごめんなさい」
「普通に嫉妬していたの、二人に八つ当たりしたかったの」
とんでもない、八つ当たりって怖すぎ。
「本当なのかそれ」
「うん。彼氏も利用した」
は? 何それ、ふざけてるの? 利用した? マジで。
「利用したってどんな?」
「そこ気になる? 友達だった? 普通に私の方からかまってちゃんしたらすぐに鼻の下を伸ばしながら来たよ。それでさ、私一人が怖いのって言ったら一緒いるよって、ダサすぎるマジで、でその流れで付き合った」
人間は嘘をつく時、癖がひどくなる。この話をする前までは髪なんか触っていなかった。嘘かよ、誰かに脅されてやっているのか、今考えるべきなのはどういう状況であるかが大切だ。録画されている可能性が高い。さっきから奥にある勉強机をチラホラみている。理由はわからないが彼女も大変だな。
「そうだったのか、今怒りでお前を殴りそうだ」
テーブルを机の方に投げる。投げたことによって壁ができる。俺はスマホを見せる。
録画を終わらせろと一言メモを書いた画面を見せる
「殴るなんて最低」
と言いながら机の方に向かう。ポコんと音が鳴り録画が終わったのを理解する。
机を元の位置に戻す。
さっきとは似ても似つかない存在になっていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
ひどく怯えていた。
「大丈夫。全部わかってるから大丈夫だ。」
彼女が落ち着くまで待つことにした。俺は頭の中を整理する。
俺の予想はこうだ。
俺が純恋先輩と仲が良かったのが嫌だった。それで俺に不利益になるような出来事を仕向けたか。
まさか、仲が良かった先輩がこんな人だったなんてな。
「ココア飲むか?」
「う、ん」
「オッケー」
俺は一回に降りてココアを作る、そしてフルーツをいくつか選び部屋に持って行った。
俺が部屋に入ると泣いていた。追い込まれていた。それほど彼に依存しているのか、何かを恐れているのか。
「はいよ、いちごだ」
「ねえ、何で優しくできるの?」
「答えは一つだな、俺は頭が良いとしか言えないな」
「なにそれ」
笑う彼女は美人だった。ビールのcmが似合いそうだった。
「今度は、ちゃんと話してくれ。絶対に助けるから」
重い口を開いた。
「私と彼の出会いは、高校一年の時だった、私はあまり性格はよくなくてね、けど、知らない人も多かったから優しくしないといけなかったの、偽りの自分を演じていた、そんな私はある日疲れて屋上に行ったの、そしたら彼がいた。彼は私に偽りの自分なんかやめたらどうだって言われたの、彼だけはわかっていたの、それから私は毎日屋上に行った。彼に会いたかった。本当の自分でいれたのは、彼の前だけだった。表の顔は人気になっていった。『優しいね』ってずっと言われ続けた。それが苦痛だった。気持ちを踏みにじってるように感じた。
けど、ある噂が広まった。私の噂だった、裏の顔は実はやばいみたいな馬鹿みたいな噂だった。困っていた時彼がまた私を救ってくれた。彼に会いたい気持ちは強まるばかりで好きになっていた。そして今年の4月から付き合ったの。けど、私は利用されていたの、彼には違う付き合ってる人がいたの。それで今日別れ話をするつもりだった。けど、別れたらお前の本当の顔の噂流してやるからな、それが嫌なら拓哉に近づいて殴られてる動画を撮りにいけって言われた。
友達がいなくなるのが怖かった。だから、私は君に近づいたの。ごめんなさい」
この怒りはどこにぶつけたらいいんだ。
手のひらには爪が刺さっていた。皮膚に爪が深く刺さっていく、我を忘れていた。何を言ったら良いんだ。
言葉がみつからない、いや、探せない。探せる状況ではなかった。俺が今すぐにでも殴りに行ってやる。じゃなきゃ話なんか到底できない。俺は小百合に電話を掛けた。
「どうかしたの?電話掛けてくるなんて珍しいね」
「すまん、俺の家にすぐ来てくれ」
「なんの冗談?あなたの家....」
「すぐに来てくれ。頼む」
俺は電話を切った。そして名前を知らない彼女の前に座る。
「俺じゃダメか、付き合うとかそんなんじゃない、俺の前ではありのままでいてくれ、だからもう我慢することじゃない」
「う、ん」
彼女は依存なんかしていなかった。ただ今までの地位がなくなってしまう。それが怖かったはずだ。一人になる恐怖、不安、たくさんの恐怖があったはずだ。
酷く泣いていた。俺の手は皮膚が剥がれひどく怪我をしていた。彼女を支えた時にできた怪我より何百倍も痛そうだった。けど痛くなかった。
ガチャとドアが開く。純恋先輩と小百合が入ってきた。
「これは、どういうことなの、説明して拓哉」
「後でな」
俺は、それだけ言い残し部屋を出た。
明日のことなんかどうでもいい、停学処分になるだろう。それでも、彼女の苦しみと俺の怒りが収まるなら安いもんだ。先生もびっくりだな、名門高校から停学処分の人が出るなんて。
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