閑話2 バンド結成⁉「アズーラ・ラテ」演奏
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「かねっち、バンドしようよ。」
朝学校に登校すると青波に突然バンドに誘われた。え…俺?なんでやねん。
「青波、俺に行ってるのか?」
「そうだよ、本気でバンドやろうよ」
俺は作品の提出も終わって割と暇なので時間はあるか。やるか。
「なんの楽器やればいいの?あとそもそも何でバントやりたいの?」
「最近『鏑木ミルク』の新曲がどんどん出てるでしょ。あの『アズーラ・ラテ』を私も演奏してみたくて、ギターの練習ここ最近ずっとしてたんだ。今度高校生用のバンド大会があるらしくて、私も参加しようと思ってるの。まずメンバーを集めないといけなくてさ」
俺はバンドと言ったらギターかドラムだがキーボードしかできないんだが。あと二人でやるのはさすがにきつい。
「誰をほかに誘うの?」
「なんか、橙士郎はドラムとして私たちのことサポートしてくれることになってるんだ。」
「私はギターで精いっぱいでしょ。もう一人くらい欲しいの誰かいない?」
「俺はキーボードを弾けばいいのか?」
「そうだよ、ほかにお願いできる楽器弾ける子私知らないから。他の軽音部の子たちは自分たちのバンドの練習で忙しいみたいだし。橙士郎はいろんなところに助っ人参戦するからあんまり練習できないらしいの。」
「なら必要なのはボーカルか、紫乃に歌ってもらうのはどうだ?」
「いいね、紫乃に頼んでみてよ。歌別にカラオケ行ったときは少しうまかったしね」
「早速、明日からよろしくね。朝からじゃないと教室借りられなくて。一曲にすべてをかけようね」
話を聞くと出場するのに迷いに迷ったらしく発表の本番が二週間後らしい。いくら何でも間に合うか怪しい。まずは何としても紫乃の参加許可を早急にとらないと。俺より遅れて登校してきた紫乃の元に駆け寄る。
「紫乃お願いがあるんだけどちょっといいかな?」
「なによ、金彦」
「俺と青波と橙士郎とバンドやるからさ。紫乃にボーカルやってほしいんだ」
「私がボーカル⁉そんなに歌がうまくないわよ。悪いわ」
「そこを何とか頼む。練習一緒にしよう」
「誰が練習してくれるのよ、第一そんな人いないわ」
どうしようか。俺の周りに歌が上手な人はいるがみんな別に人に教えられるほど上手ではないかもしれない。そもそも聞いたことがない人の方が多いだろう。
…いる。俺にはたった一人だけ心当たりがある。
お姉ちゃんに頼ろう。当然曲も知ってるし、歌はうまい。最高である。早速連絡をしておく。
「お姉ちゃん、紫乃が『アズーラ・ラテ』をバンドのボーカルとして歌うことになったのでコーチングしてください、お願いします。二週間後には本番になってしまうのでなるはやでお願いします。」
これで俺たちのバンドは結成された。二週間のバンド練習はものすごく忙しかった。例えば。
「紫乃ちゃん、久しぶりだね」
「久しぶり、琥音姉さま。今日はわざわざありがとう。」
「いいよ、いいよ。気にしないで。私の妹でもあるんだから。妹の頼みは受けいれなくっちゃね」
「早速歌ってみよっか」
紫乃と姉が一緒になって歌の練習をしている。お姉ちゃんは歌がわりとだけではなくかなり上手いのと同時に時間もないので結構スパルタ気味に練習を行っていた。
練習が終わるたびに、少し落ち込んで。俺に抱きついてきた。なんか、金彦成分を吸収するとか言っていた。紫乃は何度でも来て欲しい。かわいい。
紫乃は歌うだけだが、俺も俺で楽譜を暗記しなくてはならず、メロディーがどんな感じか覚えなくてはいけないし、青波も俺もバンドは初心者なので気持ちをなかなか合わせられず、音がどうしてもずれてしまった。
楽譜を見ながら演奏しているとあんまりリズムが安定しない青波を基準にするのですごい大変だった。
紫乃だけが日に日によくなるが、俺たちはなかなか息が合わない。
さらに大変だったのは橙士郎が練習に来た日である。ただでさえ毎日眠いのに橙士郎が来たことでもっとリズムが合わなくなった。まず最初の一音からしかあわない。
珍しく、大阪弁が強くなっていて少し困っていたのだろう。バンドの雰囲気はいいのだが、成果が出なかった。
「金彦、何弾いてるんやちゃうで」
「青波、もっと前を向くんや背中が丸まっとるでかっこわるいわ」
「紫乃、音楽に合わせてもう少し声の大きさを上げて、後ろの俺のリズムに合させてゆっくり目に歌うんや。すこし早いで」
リーダーである橙士郎的確な指示を出すことができるが俺達の方にその指示を実行できるだけの力がなかった。少しだけ俺もあまりに悔しくて涙が出てきてしまった。
しかし、俺たちは全員頑張っていた。毎日毎日練習することで次第に息があっていき練習で最後までつっかえることもなく完走できることも多くなっていった。
「明日は本番や、みんな気~張るより寝るんやで。お疲れさん」
「明日頑張りましょう、みんなで力を合わせて頑張るぞー((((おー))))」
練習は今日で終了だ。長く苦しい日々だった。今日は早めに寝るか。
本番を迎えることになった。
会場は広めの公園である。基本的には演奏しに来た高校生の方が多いが一般人らしき人もいないわけではない。天候は晴れれていたので、良かった。台風予報があったがぎりぎり日本列島に上陸する前に開催できた。
昨日はすごく持ちものチェックをしたので全員忘れ物することなく本番を迎えることができた。
俺たちは二十組中の一組目になってしまった。
「ごめえええん。みんな私とんでもないところひいちゃったよ。コピーバンドは数字がはやいらしいけど早すぎたよ。大丈夫準備はできてる?」
「もちろん大丈夫だよ」
「私もいけるわ、たくさん練習したもの」
「やるで、ここまでの練習の成果をだすだけや、楽しまへんとな」
舞台の上に立ち上がると観客が何をしているのか非常によく見える。最初だからか俺たちをみんな見ている。
舞台袖にいる次のバンドも緊張しているようだ。必死になってエアーギターで指の確認をしている。俺たちのメンバーは緊張して例外ではない。もう舞台の上に上がってるんだぞ。司会者さん、早く始めたいです。
「それでは『鏑木ミルク親衛隊』のみなさんです。曲名は『アズーラ・ラテ』」
「みんな、盛り上がっていくぜ!!!俺たちが一番最初、先陣切るぞー!」
橙士郎のスティックをたたいて俺たちの演奏が始まった。四分間にすべてを懸ける。
きっと気持ちのこもった演奏がすごくよくできた。
「ダーン、みなさん。ありがとうございました。『鏑木ミルク』親衛隊でした。」
パチパチパチと拍手が鳴りやまない。良かった。拍手は名残惜しいが舞台を後にする。
俺たちはやりきれた達成感でいっぱいである。
「みんな、今日は私のためにバンドやってくれてありがとね」
「ホントによかったよ、青波の演奏も最高だったし、紫乃もすごいうまくなったな」
「そんなこと言ってもなにも出てこないわよ」
「ドラムももっとほめてーや。キーボードも良かったわみんなベストが尽くせたな」
「本当に良かった。あとは表彰式だから、ほかのバンドの演奏も見よう」
俺たちはもう今日は終わったので演奏を見学する。どのバンドのみんな一生懸命弾いていた。知ってる曲も当然多くて楽しかった。俺たちのバンドも負けてはいなかった。
最初は寄せ集めのバンドだったかもしれないが二週間の長期間の演奏により俺たちの音楽のクオリティは非常に満足の出来るものになっていたと思う。
「今からまた盛り上がっていくぜー」
おお、今演奏しているのは田口君じゃないか。同じ学校である、そりゃ当然軽音楽部も演奏するか、むしろ当然来るはずだ。
時々学校の放課後聞こえてきた音楽が聞こえる。なるほど、あの音楽は田口君たちの練習の裏側だったのか。俺たち以外にもバンドの練習を頑張っている人がいたことを改めて実感した。
テンポよく次から次へとバンドグループが変わっていき最後の演奏が終わった。案外朝が早くはじまったのか最後のバンドの演奏が終わったのは二時である。
残りは表彰式である。もしかしたら表彰されたるかも、少しどきどきする。
「表彰式を行います。まずは皆さんお疲れ様でした、どのバンドもみんなよかったと思います。さっそく行きます。大賞の前に」
「まずは特別賞から、オープニング賞は『鏑木ミルク親衛隊』のみなさんです。おめでとうごさいます。次はパフォーマンス賞……」
「やったね、みんな。オープニング賞だって」
青波がすごく喜んでいる。もちろん全員舞い上がっているが、一番最初にメンバーを集めたからなのか緊張の糸がほぐれたようだ。
「俺たちのバンドはオリジナル曲を演奏するバンドよりも止まらずに演奏できたからもしかしたらと思ってたけど、やったね」
「私の歌も、これは役に立ったようね」
「よくやった!わしらの演奏良かったちゅーことやな」
本当に良かった練習の成果が遺憾なく発揮できたようだ。審査員にも十分伝わったらしい。青波が代表して表彰状を受け取りに行った。
きちんと表彰状にはバンド名と一人一人の名前が入っている。丸山金彦「Key」と書かれている。
最優秀賞は俺でも一番うまいと思っていたバンドでとても上手であった。会場を一番盛りあげていたので納得である。
「みんな、写真撮ろうよ。一回バンドは解散するけどまた結成しようね」
「賛成、また絶対やろうな」
「じゃあ撮るよ。鏑木っていうからミルクっていってね。」
せーの、鏑木。ミルクーーーーカシャ。
撮れた写真には嬉しそうに表彰状を持っている青波と俺と紫乃そして橙士郎がみんな笑顔に映っていた。
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