結ばれる本気のキス

「誰かいますかー?」


 返事がない。誰もいなそうなので美術準備室に入った誰もいない。

 部屋に入って探すと紫乃の私服があった。

 大きな鏡があり、多分水愛先輩が自分で使っているのだろう。


 俺は水愛の制服を手に取った。ふわっと紫乃の匂いがする。紫乃を抱きしめた瞬間を思いだした、すごいいい匂いがしていた気がする。


 誰にも見られていないかどうか確認してそっと匂いを制服に顔をつけて吸った。

 俺最低だ。

 勝手に制服の匂いを嗅ぐなんてまだ信頼してくれてる紫乃を傷つけてることである。


 今日は絵を描く気分になれない。締め切りが近くなっている中少しでも進めたほうがいいのは確かではあるがもう帰ることにした。


「水愛先輩お疲れ様です、今日は先に帰ります」

「またね、丸山君、紫乃に言っておいてね、全然気にしてないって。あと紫乃っていい匂いするよね」


 先輩にも連絡は着ていたのか、俺にだけ何にも反応がないとか紫野は先輩になんて相談したのか。


「そうですね、制服すらいい匂いだし」


「だよね、紫乃っていつもいい匂いするよね、私も気にしてるけど紫乃ほどいい匂いしなしもん。いつも私嗅いでるもん匂いフェチなんだ。」


「先輩、匂いフェチだったんですね」

「でも、丸山君ほどじゃないよ。制服だけで間接的に嗅がないから。」


 でない。ん?…おかしいなんで間接的とか言ってきてるんだ。…はっ!


「先輩、まさか俺のことつけてきて中見てました…?」


「丸山君、私もやったから大丈夫。気持ちはわかるよ。秘密にしておこうね。絶対に約束だよ。」

 え…もう絶句である。つい勢いでやってしまったが見られていた。しかも私もやったとか言ってるんだが。


 水愛先輩、水愛そんなに匂いフェチなの?紫乃が好きなのか。

 先輩の意外な秘密を知ってしまった。もし余分なことを言ったら俺が水愛のおっぱいにダイブしたことが派手に広がるだろう。


 最初からそんなこと言わないでくれよ。笑顔で言われたが笑顔が怖い。


「はい、約束です」


 俺は逃げるようにそっと部室を後にした。なお制服はきちんとカバンの中にしまった。


 俺は紫乃家の前にまで来ていた。果たして出てくるだろうか。インターホンを押した。ピンポーン。

 なんだか、中に入りたいがきちんと待つ。


「中に入ってきて、金彦」


 どうやら紫乃だけで家にいるようである。良かった、さすがに話もできないほどではなかった。


「お邪魔しまーす。俺はドアに入るとパジャマを着ていた、紫乃に会った。」

「まずはリビングに座って頂戴」

「分かったよ、制服持ってきたからな」


 俺はリビングに入って座った。昔は時々来ていたがそんなに変わってない。他に誰もいないようだが仕事だろう。


「はいこれ、制服。紫乃忘れてたみたいだから」

「ありがとう、受け取るわ」


 紫乃は普通に話そうとしているが、手が思いっきり震えている。それに気まずい、日常を取り戻さなくては。


「先輩たちの絵を見たけど、みんなめちゃくちゃ上手だったぞ。あんなすぐに描き始められるもんなんだな」

「あたり前よ、みんな私と同じくらいすごいんだから、かわいくてエッチに描けそうだったでしょ」

「まあ、私も負けてはないけどね、あんたも困ったら私に頼りなさい」


 どうやら元気そうである、やはり風邪とかではなかったのか。パジャマとか久しぶりに見たので俺の幼馴染やはりかわいい。

「それでさ、昨日のことなんだけど…」


 来てしまった。どうしても避けようのない話題であった。


「ごめん、俺がもっと早く地雷服に気づいておければ良かった、いやだったんだろ」

「そうね、私も駅で言われるなんて思ってなかったわ。水愛の服勝手に着てきたのは悪かったわ。でも

 大した問題じゃないわ」


「ならなにが問題…いや分かってるよ」

「私にキスしてきたわよね、駅で。なに考えていたのかしら」


「ほら、その…紫乃イラストレーターになりたいって言ってたから。俺も応援してさ。ほら、よく漫画とかでキスシーンあるだろ。自分が経験してた方が、書きやすいかと思って」


「ならあんた、私が黒田とかとキスしても言い訳?あんたの面前で」

「絶対嫌だ、あいつらにやられるくらいなら俺がする」


 あいつらには絶対紫乃を渡したくない。え、なんだこれ。試されてんのか。紫乃は俺にそっと寄ってきている。

 状況は昨日と一緒である。俺の隣に座ってきている。


「ふーん。金彦嫌なんだ、ギャルは簡単にいろんな人と付き合っちゃうわよ」


 紫乃なんてこと言うんだ、普通につらいんだがそんなことされたら。


「紫乃は誰にも渡したくないぞ」



「なら、私に一言言わなきゃいけない言葉があるんじゃ…ないかしら」


「なんでもいいわよ、金彦なら。私にわかるように直接言うのよ、ひよっちゃだめよ」


 紫乃の顔は真っ赤である。つられて俺も全身が赤い。この距離感、この言葉、導き出される結論は一つである。




「有馬紫乃さん、夢を叶えるための手伝いを俺にさせてください。ずっと紫野の隣にいたいです。どうか、俺と付き合ってください。」




 怖くて顔が見れない、下を向いていると紫乃に顔を片手で上げさせられた。紫乃と視線があう。もう俺から言えることは何もない。紫乃は全身ががたがた震えている。


 でも顔を手で覆っていてよく見えない。そっと紫乃は笑顔なんだが、今にも泣きだしそうなんだかよくわからん複雑そうな顔をしている。


「よく言えたわね、金彦…」


 俺の告白の返事は?ないのか。え…緊張しているのか、もしかして好きでもなんでもない突然の告白にドン引きしてるのか。もう俺は終わりである。明日から終わった。たっぷり十秒かんの沈黙が俺たちの間に流れる。涙が一滴そっと俺の手に落ちた。


「私もずっと好きだったわ。私で良ければ付き合ってください」

 目を閉じた紫乃、俺はそっと紫野のほっぺたに軽くキスをした。ちゅ。その瞬間紫乃はぱっと目を大きく見開いて俺の目を見てきた。



「キスはこれから唇にするのよ」



 今度は紫乃からそっと俺に向かってキスしてきた。俺は紫乃をもう二度と手放さない様にぐっと抱きしめる。紫乃と抱き合っているとすごいいい匂いがした。


「私の部屋にいくわよ、ここじゃママが帰ってきちゃうわ」


 紫乃の部屋でなにをするつもりなのか。俺は紫乃の部屋に行こうと立ち上がる。その時、時間はもう夕方五時を過ぎていた。



「まずいわ、ママが帰ってきちゃう。今日は帰りなさい」


 来るのが若干遅かったか、今日のところは俺は心臓が持ちそうにない。荷物をもって玄関に戻った。普通に名残惜しいが、仕方がない。


「今日から私たちは付き合ってるけど、私たちだけの秘密だからね。金彦が他の女に迫られて困ってるところを私は見て絵にして、もっとうまくなるわ」」


「俺は紫乃のこといつでも応援してるからね」

「また明日、今度こそ学校で会いましょうね」


 目を閉じて、金彦。俺は目を閉じる。なにされるんだか。


「金彦いってらゃっしゃい。ちゅ」


 紫野からキスをまたしてきた。すぐに離れてしまったが何回してもキスは良かった。俺には彼女ができた。


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モチベ上がりますのでよろしくお願いします。

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