やらかい女の子の手

 昨日の夜から紫乃に連絡をしているがなんにも反応がない。


 困った、いつでも既読がついてもいいように十分に一回は確認したが何度見ても一緒であった。いつものように登校したが、そこに紫乃の姿はない。

 学校に行ったがそこにもいなかった。結局今日は休みであった。昨日


「また明日」って言っていたんだが。


 昼休み、俺は黒田と炭彦と話していた。


「今日紫乃が休みだったんだが、お前ら何か聴いていないか?」

「知るわけないだろ。どうせ風邪だって」


「俺が話しかけても返事一つ帰ってこないんだぞ」

「じゃあ寝込んでるんだな、俺の妹もこの間熱出してたけどスマホなんて見る元気もなかったからな」

「それでも、今日返事一つないなんておかしいんだよ」


「しつこいですよ、…なんか紫乃さんと何かあったんですか?」

「何にもないよ、いつも通りだって」


 なんにもないわけないから一応聞いているのだが。ずいぶん察しのいいやつである。こいつら筋肉と妹に脳を支配されているわけではないらしい。


「もしもさ、俺が今から突然黒田にキスしたらどう思う?」

「お前そんなことしたのか、いや俺か。え…普通に嫌なんだが」


「僕もいやですよ、急にやんないでくださいね」

「だよな、いやだよな。俺はいいけど。そうだよな」


「金彦、お前からするのか?」

「そうだよ、突然お前らがキスするわけないだろ」


 やはり紫乃はいやだっただろう、いやすぎて学校を休んでいるのかもしれない

 昨日は雰囲気があまりに良いのとキスができる理由を作ってしまったが、俺のことなんか顔も見たくないに違いない。


「あくまでも仮の話だからな、気にするなよ」

「いや、俺だって妹から昔してもらった時は嬉しかったから気にすんなよ」

「そうですよ、僕だって彼女とした時には嬉しかったんですから」


「お前の彼女って何歳の時だよ」

「それは…気にしなくていいじゃないですか」

「わかったよ、別にしないから安心しれくれ」


 俺は妹でもなければ、彼氏でもない。ただの幼馴染である。

 もはや普通にいやだろう。なんて謝ろうか、はあ。困った。悩んでも問題は解決しなかった。トイレにでも行くか。


「トイレ行ってくるから」


 俺はトイレに歩いて行った。十秒後黒田と炭彦が話していた。


「まさか、金彦紫乃とキスして悩んでんのか?」

「僕は違うと思います、きっとやろうとして断られてショックだったんだと思います」


「あいつら、意外と関係が進んでるんだな」

「そうですね、僕も中の良い女友達くらいかと思ってましたよ」


「青波さんとこの間ずいぶん仲良さそうに話してたのつい最近見たので、てっきりそっちもあるかとおもってたんですが」

「絶対に有馬紫乃は金彦のこと好きそうに見えるのに意外だな」

「まあそれが金彦のいいところですよ。見てて面白い」


 俺がトイレから帰ってくると二人で仲良く話していた。金彦って聞こえたが、まあなんでもいいか。




教室に入った時に青波に話かけられた。


「かねっち、ちょっといい?」

「なんだ、青波?」


「紫乃が美術室においてある制服もってきてだって」

「俺の理由は分かるけど。紫乃と連絡通じるのか?」


「そうだよ、なんかよくわかんないんだけどかねっちと直接話したくないんだって」

「俺はなにもしてないぞ」

「それ、なにかした人が言うセリフだよ、かねっち何したの?けんか?」


 俺は紫乃と今けんかしてるのか?単に嫌われてるとか嫌がられているとかじゃないのか、胸突然触ったり、キスしたり俺には心あたりがありすぎてそうしようか非常に困る。


「なあ、今から急に青波に握手していいか」

「いいよ、はい」


 青波は手をさしだしてきたので俺は手を握って握手した。


「ついでに抱きしめていいか?」

「え?かねっち何言ってんの。大丈夫?」


「ごめんね、聞いてみただけだから。気にしないで」

「まあいいけど…(なにがしたかったの?)」


 俺と青波はいきなり抱きしめる事はできなかった。


 と言うか昨日そっとハグしたがなんだか嫌な予感がしてきた。紫乃嫌がってた気がする。

 でも美術室に制服を取りに行かなくてはいけない。放課後になったので美術室に行く。

 こんこん失礼しまーす。




 教室に入ると部員の佐藤さんは今コンコンコンと木で作っていた。清水君は粘土かなにかで作っている。他の部員はなんだかリンゴを描いていたりしてみんな忙しそうであった。


 悪いが水愛先輩に話かける。今日は制服であったが髪はツインテールにしている。邪魔じゃないかと思うが普段の恰好に比べたら誤差である。

 かわいい恰好をとにかくしなくてはいけないのだろう。


「水愛先輩、こんにちは。紫乃の制服って準備室にありますか?」

「あっ、金彦君。いいところに来たね。私の作品見てくれるかな。結構いい感じにできてき始めてると思うんだよ」


 俺は先輩の絵をよく見る。どうやらヤンキー座りをする『花宮すず』の恰好らしい。見た目のかわいらしさとヤンキーと言う組み合わせがとても強くてかわいい。さすが水愛先輩である。


「すごいいいですね。俺は褒める事しかできませんよ」

「ありがとう、丸山君。座ってるところに水たまりを描いてパンツを反射させて描くからちゃんとエッチな絵になるからね、安心して」


「お姉ちゃんには今話しかけない方がいいよ。多分集中してて反応がないと思うから」

「分かりました、ありがとうございます」


「いいってことよ、私にはいつでも話かけてね、私たちくらいしかこの『すず』ちゃん描いてる人いないから。丸山君も一緒にがんばろうね!」


「はい、一緒に頑張りましょう」


 俺はとりあえず美術準備室に制服を取りに行った。途中で後ろからちらりと邪魔をしない様に心愛先輩の絵を見たが、光って見えた。


 なんか水愛先輩の横たわってるような写真を描いているみたいだがなんというか全部が違う。

 現実は光ってなどいないが、百人見たら百人驚くような素晴らしい絵を描いていた。


 紫乃と並ぶか超えそうなくらい上手い。ここにえっちな要素を足しても足さなくても問題なくなんか賞が取れそうであった。


「やっば…」


 声が出てしまったが、先輩は全く聞えなかったかのように真剣に描いている。邪魔しちゃ悪いのでこのままはいる。今日はさすがに慌てて入ってはいけない。さすがに大騒ぎすると怒られそうだ。


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モチベ上がりますのでよろしくお願いします。

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