第50話上洛
「私、信玄の様子見てくる。」
「俺も行くよ。夏希。」
「ありがとう。昌景。皆は、駿府城を守っててくれる?」
「承知しました。」
夏希と昌景は、躑躅が崎館へと向かった。
「今日はここで野宿するかあ。」
「そうね。」
昌景は、火を起こし、敷物を引いた。
「お前、もう寝ろ。俺が番しとくから。」
「交代ね。」
「いいよ。徹夜は慣れてる。」
「昌景、討ち死にを恒に覚悟してるの?」
「生き残ろうと思えば、死ぬ。死のうと思えば、生き残る。」
「私を残して死なないでね。」
「当たり前だ。」
夏希は、知っている。長篠の戦いで、昌景が討ち死にすることを。異世界通りに行くとは限りないけど、不安で溜まらない。
夏希は、昌景にキスする。
「こんな夜中にキスすると危険だぞ。」
「危険ってどういうこと?」
「うるさいっ。ガキは早く寝ろ!」
「どうせ、私はガキですよ!お休み!」
翌朝。
『夏希ちゃん、おはよう』
「おはよう。ドラミ。」
「さあ、行くぞ。」
「うん。」
夏希と昌景は、馬を走らせた。
「もうすぐね。」
「おう。」
躑躅が崎館。
「信玄!お体の方は大丈夫ですか?」
「これは、夏希殿。大事ない。」
「本当ですか?お館様。」
「高坂、夏希殿はお疲れであろう。温泉に案内しておやり。」
「承知しました。」
「昌景、織田信長が比叡山延暦寺を焼き討ちした。仏をも恐れぬ男。織田との同盟は無きに等しい。本願寺などが、織田に対する包囲網を結成した。わしもこれを機に上洛しようと思う。わしには時間がない。」
「お館様。」
「先陣、頼んだぞ。」
「承知しました。」
「高坂君、案内してくれて、ありがとう。気持ち良かったあ。」
「いえ。某は。」
「信玄!信玄の温泉って最高!」
「気に入ってくれて嬉しいぞ。」
「信玄って私のお父さんみたい!」
「武田守護神様だが、夏希殿はわしの娘みたいなもんじゃ。」
「嬉しい!信玄、大好き!」
「わしも夏希殿のことが大好きじゃ。」
かくして武田信玄は戦の準備をした。昌景は、そのことを知らせるために、夏希と伴に駿府城へと戻って行った。
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