第5話夏希、初首を取りに行く

「皆の者。そろったか?」

「はい。お館様。」

「天から、舞い降りて来たおなご、我が武田守護神となるお方を紹介しようと思う。」


ザワッ。


「夏希殿。ここへ。」

「はっはい。」

「赤い長い美しい髪。武田守護神じゃ。」

皆が口々にそう言う。

「あっこれ?染めたの。お洒落。」

皆は、聞いていない。

夏希は昌景を見た。昌景はニタニタしている。

(もうっ。昌景ったら、俺がついてると言ったくせにニタニタしているだけじゃないの!えーい!こうなったら。) 

「私に任せない!守護神がついてる以上、武田家は滅亡しません!」

「これは、心強い!皆、今日は祝い酒だ!飲もう!」

「とことん、飲みましょうぞ!」

むさ苦しい男侍達は盛り上がっている。

すると一人の男がやって来た。軍師、山本勘助やまもとかんすけ

「そちが誠に守護神ならば、首の一つや二つ、取って来れよう。信濃国、高梨城にちょっかい出して来るがよい。」

「くっ首!?」

「怖いのか?守護神ともあろう方が。」

「いっいいえ!怖くありません!取ってくればいいんでしょ!」

夏希は気持ち悪いと思いつつも、負けん気でそう言ってしまった。

(どうしよう、、、。)

「部隊は、俺の部隊で。」

昌景が勘助にそう言い放った。

「戦国最強の赤備え騎馬軍団が地に落ちらんと良いがな。」

「、、、。」


「なあに!あの嫌みなおっさん!」

「悪い人じゃない。」

「気持ち悪いも減ったくれもないわ!首、取って来てやる!」

「いい度胸じゃん。」

いきなし、武田信玄の愛馬、黒雲が皆がいる部屋の外へとやって来た。

「これこれ。どうした。」

武田信玄達が愛馬の元へと駆け寄った。

「夏希殿。わしの愛馬に乗ってみるがよい。」

「はっはい。」

夏希は、鐙に足を乗っけて騎乗した。黒雲は静寂を保つ。

内藤昌豊ないとうまさとよ、副将格を務める武田四天王のうちの一人が静かに言った。

「お館様の黒雲を騎乗出来るとは。」

それもそのはず、黒雲は気性が荒く信玄以外、騎乗出来なかったのである。

「夏希殿。」

「はい。信玄。」

「わしの黒雲を夏希殿にやろう。わしは、新たに新調する。」

「いいんですか?」

「黒雲は、夏希殿を気に入ったようだ。」

「ありがとうございます。名前はドラミ。よろしくね。ドラミちゃん。」

黒雲は、嬉しそうだ。



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