35. 同じ苦しみを
あの騒ぎの後、私達は夜会の会場に戻ることが出来た。
エルウィンとコリンナは私を襲った罪で拘束されて、夜会の後に騎士団が監視する牢に入れられることに決まったらしい。
「エリー、本当に大丈夫か?」
「本当に大丈夫ですわ。ライアス様は心配し過ぎです」
「あんな事があったばかりだから無理はしなくて良い」
今はライアス様とダンスを楽しんでいるのだけど、周囲の視線は私を心配するようなものばかりだ。
どうやら私が一生残る傷を負わされたと噂になっているらしい。
襲われている時は護身術の練習のお陰で冷静だったし、傷付いてもいないから、なんだか居たたまれない気持になってしまう。
「一旦休憩しよう」
「分かりましたわ」
少し難しい曲を無事に終えると、周囲から拍手が聞こえてくる。
それに笑顔で応えながら、私達はテーブルの近くへと戻った。
「エリー、元気そうで安心したわ」
「ありがとう。レティが助けを呼んでくれたお陰だわ」
「大事な家族のことだから当然よ。
それにしても、エリーは本当に強いのね。私があんな目に遭ったら、怖くて家から出られなくなってしまうわ」
「レティが護身術を教えてくれたお陰だわ。
逃げられる自信があったから、全く怖くなかったの」
レティとお話しをしながら、夜会を楽しむ方々を眺める私。
この後はライアス様とダンスをしたり、他の方々とのお話しを楽しんだりして残りの時間を過ごした。
◇
翌朝のこと。エルウィンとコリンナの処遇を決めるためにと、私は登城を命じられて陛下と向かい合っていた。
場の空気は張り詰めているけれど、私の隣にはライアス様が寄り添ってくれているから、あまり緊張しないで済んでいる。
「エリシア嬢。今回の件だが、エルウィンの罰は一番重くて鉱山送りだろう。
コリンナの方は厳しい修道院送りになる。本来はもっと重くしたいところであるが、誰彼構わず処刑していては王家への不信感が募る
「それが最善だと分かりますから、大丈夫ですわ。
極刑にすれば苦痛は一瞬で過ぎてしまいますけれど、強制労働であれば極刑以上に厳しいはずですもの」
「その考え方は無かった。確かにエリシア嬢の言う通りだ。
では、今日の夕方から刑を執行するように指示を出す」
「ありがとうございます」
エルウィンとコリンナには今まで散々酷い事をされてきたから、その分苦痛を味わって欲しいと思っている。
だから極刑よりも強制労働の方が私の気持ちは晴れるのよね。
ライアス様は極刑にしたかったのか、浮かない表情をしていたけれど、私が陛下の提案を受け入れると明るい表情に戻っていた。
「では、早速指示を出してくる。
パーティー前に時間を取らせて済まなかった」
「こちらこそ、時間を作って下さってありがとうございました」
部屋を去ろうとする陛下にお礼を言ってから、私達も立ち上がる。
それから今日のパーティー会場に向けて足を踏み出した。
今日のパーティーの会場はここ王城だから、歩いて数分で前回と同じ大きなホールに辿り着いた。
今回も立食形式だから、雰囲気は前回と同じ。
前回は初めての社交界だったから緊張していたけれど、三回目の今日は緊張も和らいでいるから、きっと最後まで楽しめると思う。
コリンナ達に邪魔される心配も無いから、昨日よりも体が軽い。
「エリー、真ん中の方に行こう。ここだと皆が探すことになるからね」
「分かりましたわ」
ライアス様に促されて会場の真ん中の方に移動すると、早速立て続けに挨拶をされることになった。
最初は戸惑ったけれど、今日は二回目だから笑顔を浮かべて対応する私。
挨拶が済んでからは、ライアス様とのダンスを楽しんだり、レティ達とのお話を楽しんだりして過ごした。
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