第36話 2016年に起こった事件


 同じく松尾山にある金城拓也らの潜伏地ではある事をインターネットで調べていた。それは2016年の現代で起こった事故や事件についてだった。未来達が過去にいるいる間に様々な出来事が起こっていた。4月に熊本大地震が発生し、熊本城が崩壊していた。蓮は中学校の修学旅行で見た熊本城が崩壊しているのにとてもショックを受けた。また、沖縄のニュースでは自分達を始め松茂良興一と赤嶺祐樹、香坂亮太の失踪事件や乳児院や児童養護施設にいる子供の集団失踪事件、うるま市の女性が米軍に殺害されるという痛ましい事件も存在していた。


「なんかここにいる間に沖縄では凄い事件が起こっているね」


「蓮さん、児童養護施設や相談所の集団失踪事件と米軍の事件って一カ月ぐらいしか変わらないよ」


 未来と蓮は事件の記事をネットで見ながら話し合っていた。


「あーしかも沖縄の児童養護施設や相談所だからと言って職員の事を叩いているやつがいるー拓也さん、本当は違うんでしょ?」


「職員は催眠弾でやられてケガしている奴もいるから誘拐したとされる犯人達に抵抗できなかったんだよ。中には拳銃で撃たれて重症になっている職員もいるからな」


「拳銃って犯人はヤのつく職業の人じゃないの?昔、沖縄でヤのつく人の抗争で警官や高校生が撃たれた事件があったよー」


「それが・・・警察は彼らにも話を聞いたみたいだが、容疑を否認している」


「じゃああの人達は誘拐していないって事?」


「そうだ」


「やっぱり帝国機関の人間が関わっているのかな?」


「香坂亮太の失踪事件と米軍の事件以外はその可能性がある」


「・・・・・・」


 未来と蓮は黙っていた。


「金城さん、沖縄にある乳児院や児童養護施設の集団失踪事件の防犯カメラを分析したらスーツ姿の男達がいたけど、彼ら帝国機関の職員じゃないかな?」


 沙夜自ら分析したという情報によると、どうもスーツ姿の男性達の殆どが帝国機関の職員だと言う。


「なぜそう思った?」


「沖縄警備隊区司令部の官舎に彼らに似た人達がうろついているから」


「そうなのか?」


「うん。でも未来さん達と香坂亮太の件は違うと思う。時空の空間の歪みだと思っている」


 沙夜が自分のタブレットパソコンをいじっていた。


「時空の歪み?」


「そう。たまに私達がタイムマシーンを使用した際に起こる現象だけど、香坂亮太もそれに巻き込まれたかもしれないね」


「そうか…しかし香坂は沖縄総合事務局の職員だからもし、この時代で帝国機関の人間に遭遇したら……」


「確かに…奴らに利用されるかもしれんな…」


 拓也は厳しい目で沙夜のパソコンを見た。


「その前に早く見つけないといけない」


「そうだな…じゃないとまずいからな」


「あのー拓也さん、さっきの乳児院、児童養護施設や相談所で起こった子供の集団失踪事件だけど、失踪しなかった子供達もいるみたい」


 蓮がマウスを動かした。


「いるのか?」


「うん。でも殆どが中学生や高校生だったり、障がいがある子達みたいだよ」


「ん?本当だ『失踪しなかったのは中学生や高校生、身体や精神、知的などに障がいがある子達だった』と書かれているな」


「そう。中学生や高校生も児童養護施設の職員達と同じように催眠弾でやられた人もいるけど、中にはに職員達と共に犯人達に抵抗して子供達を守りきった人もいるよ」


「すごいな…」


「義叔父さん、集団失踪事件とは別の記事だけど、58号線でを見たって言う情報があるらしいよ。年代は1910年代後半から20年代のバスらしく、今では見かけないって。しかもバスには子供が多く乗っていたし、子供がバスに乗る様子も目撃しているから警察は集団失踪事件と関連性があるのではないかと分析しているらしいよ」


「そうか。確かこのバスは『ハーメルン号』と書かれていなかったか?」


「うん。記事にもバスの名前はハーメルン号と書かれていたよ」


「ハーメルン号・・・・・まるで童話『ハーメルンの笛吹男』みたいだな」


「その『ハーメルンの笛吹男』もいろいろな説があるからね。だから本土のメディアでは沖縄で起こった乳児院や児童養護施設の集団失踪事件を『沖縄ハーメルン事件』と呼んでいるんだ。他にも児童養護施設だけではなく、児童相談所で保護対象になっている子供も失踪しているよ」


「本当か?記事を見ると、児童相談所の方も幼稚園児や小学生が失踪しているな」


「うん。なにか帝国機関と関係がありそうだね」


 拓也はネット記事を見て睨んでいた。


「そうだね。あっおじさん、お腹すいたからご飯食べたい!」


 未来が拓也にねだると、ヒトガタロボットのψが「ご飯なら私が作ってあげます。今日は焼肉にしましょう」とホットプレートを取りだすと、未来が「やったー!」と喜んだ。


「焼肉かー未来ーステーキーより焼肉の方が好きだもんな」


 拓也は未来の肩を置いた。


「うん。焼肉の方が好き」


 未来がにっこり笑うと、蓮がψの行動を見て「じゃあ野菜を切ってくる」と言って台所へ向かおうとするが、「野菜は私が切るので、蓮さんは食器を出すだけでいいですよ」とψに言われたので、蓮は「はい」と言って台所から食器やお箸、焼肉のタレを出した。


 拓也と沙夜はパソコンを片付け、未来は蓮に「机を拭いてね」と言われ、布巾で机を拭いた後、冷蔵庫からお肉を出した。


 焼肉の準備が終わると、ホットプレートで焼肉を焼いた。


「ん~おいしい~ψさんは食べないの?」


 未来はが自分達が食べている中、ψが食べないのが気になっていた。


「そりゃロボットだから食べないでしょ?」


 蓮はψがロボットだから食べないと思っていた。


「いえ、私も焼肉は食べますよ。ロボットですが、内部に消化できるような機械があるので」


 ψは未来達の席に座り、お箸を持って焼肉を取り、タレをつけて食べた。


「えーオイルじゃないのー?」


 蓮は焼肉を食べるψに驚いていた。


「まるで漫画みたいだね」


 未来もψを見てまさか彼が焼肉を食べるとは思わなかった。


「まぁ・・初めてψを見る人はびっくりするよなー」


「そうだね」


 拓也も沙夜も焼肉を食べながら笑っていた。そんな楽しい日々は本当に一時である事を未来達はまだ知らなかった。

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