第5話 過去の人のフリ


 2人が脱衣所近くの医務室兼ジムに向かったのを見た拓也は「よし、このロボットにマラリア、フィラリア、、狂犬病、結核、天然痘のワクチンのワクチンを接種できるようにしよう」と言ってスマホを操作した。


 未来達は脱衣所の近くにあるジム兼医療室の中に入ると、そこは操縦室同様、白を基調とした部屋であり、エアロバイクやランニングマシーンと言ったスポーツ器具もあったが、学校の保健室のようなベットや試着室や洋服ラックが存在していた。


「ジムと医務室が一緒になっているんだ」


 未来は近くにあったダンベルを触れるが、ψが高性能な機械が搭載されている試着室で医者のような服装に着替え、「未来さん、ワクチンを打ちましょう」と言った。


「え?ワクチン打ってもいいの?」


 未来がロボットに聞くと、ロボットは「ええ、いいですよ。こちらのイスに座ってください」と言われ、未来は着物の裾を上げて白いイスに座ると、ロボットが未来の肌に消毒を塗って次々とマラリア、フィラリア、、狂犬病、結核、天然痘のワクチンを打った。



「はい、終わりましたよ。次は1種間後ぐらいに打ちましょう」


 ψが言うと、未来は席を外して、次は蓮が座った。



 未来と蓮が感染症のワクチンを打つと、拓也と沙夜が着替えのため、医務室兼ジムに向かった。未来達はその間、Ψにこのタイムマシンの事や1916年に関する情報を話した。


「ねぇΨさん、私達がワクチンを打った場所が着替えとかする場所?」


 未来が医務室兼ジムついて聞いた。Ψは「はいそうです。財団職員はそこで着替えをします」と静かに答えた。


「近くに洗濯機とか脱衣場があるけど、そこはお風呂に入るための場所だよね?」


 未来はさらにΨに質問した。


「そうです」


 Ψは台所の奥にある洗濯機や脱衣場はお風呂に入るための場所だった。



「ψさん、本当にこの世界の沖縄には基地が無いの?」


 蓮は当時の沖縄に米軍基地が無い事に驚いた。なぜなら未来や蓮達の世代では米軍基地があるのが当たり前の日常になっているからだ。


「無いです。ただ、米軍基地がない代わりに日本軍がいます」


「そうだよね。さっき日本軍がいるって言っていたから。あっこの時代の沖縄って確か鉄道が走っているって聞いたけど本当?」


 蓮は軽便鉄道の事を祖父から聞いたことがあるため、なんとなく知っていたが、未来にとっては地元の歴史のため、「そう、嘉手納駅があったよ」と話に入ってきた。


「本当です。しかし、当時は開業ているのはまだ与那原線のみで嘉手納駅がある嘉手納線はまだ開業しておりません」


 Ψが軽便鉄道について説明すると、「そっかー嘉手納線があったら、見に行きたかったよねー」と蓮が未来に話しかけると、「うん」と答えた。


「そうですね。後、拓也さんがこの時代を大正時代と言っていますが、大日本帝国の時代である事を忘れないでください。あれは言わずと知れた『悪の帝国』ですよ」


 Ψが言うと、蓮は「そうなの?」ときょとんとした表情で訊ねた。


「はい。大日本帝国がやっていない悪はないですから」


「だから沙夜さんが警察や軍隊捕まったらまずいと言っていたのか」


 未来がΨに話すと、「そうです。彼らに捕まれば最悪拷問されますからねぇ」


「怖いな・・」


「まぁ日帝ですから」


 Ψは台所を見ながら呟くと、カンカン帽を被り、スーツを着た拓也と茶色の羽織に緑の銘仙を着た束髪をした沙夜が出て来た。


「え?おじさん、この時代だったら別にこの格好でもよくない?今に近いし」


 近世と違い、洋装が出てきた時代なので、未来は別にこの服装でもいいと思っていた。


「今に近いと言っても、服装とか素材が全然今と違うんだよ。この時代、女性は洋服より着物が多かった。特に沖縄じゃ琉装している人間が多いからこの格好じゃ目立つ。着物に着替えた方がいい」


「えー面倒臭いなーやっぱり大正時代って中途半端だな」


 未来は面倒くさかったが、仕方なくワクチンを打った医務室兼ジムへ行った。


 蓮はスマホをいじりながら「蓮は行かないよー拓也さん達はどこ行くの?」と聞いた。


「今から県立高等女学校に行く。そこはあの『ひめゆり学徒隊』で有名な学校の1つだよ」



「だったら嫌です。平和学習に来たわけじゃないので」



 蓮はまたスマホを見続けた。



「参ったな・・・・・この時代はひめゆりの名称が広まっていないのに・・・もし、そっちに行かなかったら家に留守番だぞ」


「別にいいですよ。ロボットもいるんでしょ?」


 蓮は拓也から視線を逸らしながらΨを見た。


「しかし、近くには帝国機関の潜伏地がある可能性があるので、留守は危険です。着替えてください」


 Ψに言われると、蓮はわかったよと言って着替えに行った。


 未来は着替えを終えると、くしゃくしゃの蝶々ちょうちょ結びのリボンにマガレイトと言う髪型をし、紺色の羽織に赤白黒の縦縞の銘仙という当時のお嬢様スタイルの恰好で現代で着用していた洋服とジーパンを持って出て来た。


 未来は「なんか歩きにくい」と言いながら出てきた。


 未来に続き、蓮も髪を黒に戻し、ガバレットの髪型に青の羽織、紫色の銘仙の着物で出てきた。彼女もまた現代で着ていた服を持っていた。


「あー言い忘れていた2016年で着ていた服は医務室にある洋服ラックにかけていいよ」


 拓也に言われると、2人はさっきの場所に戻って現代で着用していた服を洋服ラックにかけた。


 その後、2人は居間に戻ると、座りにくいなと思いながら畳に座ると、蓮が拓也に「沖縄だけど、着物なんですね」とてっきりこの時代の沖縄なので「うちなーすがい」こと琉装だと思っていた。


「まぁ東京帰りと言えば通じるからな。うちなーぐちなんてわからないだろ?」


「うん。で、この時代では偽名で名乗らないとダメなんでしょ?別に本名で良くない?」


 蓮は本名でいいと拓也に話した。


「まぁこの時代の人には洒落た名前って言われるけど、本名でいいと思うよ。偽名なんて面倒臭いし」


 未来も偽名は面倒臭いと思っていた。


 拓也はそんな2人の声に「いやダメだ」と答えた。


拓也の答えに2人は「え?何で」という表情になった。

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