第3話 現代に帰れない?


 操縦室は赤瓦の家の民家と違い、白を基調とした部屋であり、タイムマシンを動かす高性能な機械と椅子があった。


「蓮さん、飛行機の操縦席みたいですね」


 未来は操縦席を見て飛行機の操縦席みたいだなと思っていた。


「そうだね。シートもエコノミークラスのそれだし」


 蓮も未来と同じように思いながら飛行機の操縦席のシートに座ると、スマホで翼に連絡した。


‘‘翼―なんか福州園じゃない場所に来てしまったけど、ワンチャン元の場所に戻れるかもしれない!``



 翼はこんな返信を送った。


‘‘俺、お前が急にいなくなったから心配していたけど、良かったな!帰ったら新都心で映画見ようぜ!


 翼の返信を見ると蓮はにっこりと笑った。



 未来も家族のグループLINEで自分は大丈夫だ。もうすぐ自宅に帰れるはずだとLINEで送った。


 未来達の家族も返信で「よかったね!」といった喜びの声だった。


 拓也達が操縦席に着くと、沙夜と拓也が操縦席に座り、縁が未来や蓮と同じ席に座った。


「タイムマシンが動くからみんなシートベルトをしてね」


 沙夜に言われると、未来達もシートベルトをした。沙夜はタイムマシンの操縦レバーを引くと、AIが話し始めた。


「こんにちは宗像沙夜さん、ここは1916年3月26日の沖縄県那覇区松山町2丁目です。2016年に帰りますか?それとも別の時代に帰りますか?」


 AIの問いに沙夜は答えた。


「2016年の現代に帰る!」


 と答えると、AIが「では操縦してください。起動開始」と答えた。


 沙夜は操縦レバーを動かし、タイムマシンを上空に上げると、成層圏から宇宙空間に行き、現代に戻ろうとした。が、急にタイムマシンが動き出し、この時代に戻ってしまった。


「あれ?戻れない!どうして‥」


 普段は冷静な沙夜もえ?というような表情をしていた。



「どうした沙夜-?」


「わかない‥また松尾山に戻ってしまった‥」


「え?」


 なんとタイムマシンが現代に戻ることなく1916年へ戻ってしまった。


「どうして帰れないんだ?まさかタイムマシンが‥」


 拓也が沙夜に聞くと、彼女は一旦、黙って話した。


「いや、私がエンジニアとタイムマシンの内部を確認したら故障していなかった」


「じゃあどっかで部品が欠けてたとか‥」


「いや、部品はタイムマシンに乗る前に点検するから部品が欠けていたら‥」


「運転‥出来ないんだよな‥」


「そう。その時点で運用できない。でも、このタイムマシンはちゃんと部品も揃っていた」


「じゃあ、なんでこっちは動けないんだ?」


「わからない‥けど、誰かが小細工かけている可能性があるから調べてみる」


 沙夜は操縦席にあるキーボードを操作した。


「沙夜さん、私達帰れないんですか?」


 蓮はスマホを持ちながら沙夜に聞いた。


「しばらくは帰れないかも」


「えー彼氏には帰れるってLINEしたんですよー」


「私も家族にLINEしました!どうしたらいいんですか?」


 蓮や未来は恋人や家族に「帰れる」とLINEで送っていたので、帰れなくなったと知った2人は動揺していた。


「やっぱり詐欺やっしぇ」


 蓮はシートベルトを外して居間に戻った。


 その様子を見た拓也は「仕方ない居間に戻るか」と言った未来達は居間に戻った。



 結局、未来と蓮、拓也は居間に戻った。


「結局、帰れなかったな・・」


 拓也は居間で腰を下ろし、胡座を書いた。


「はー帰れんわけ‥」


 蓮は怒って居間に座り、スマホを触った。


「おじさん、私はいいから蓮さんだけでも帰らせてよ・・」


 未来は体育座りをしながら拓也や沙夜を見つめていた。


「そう言われてもな・・帰れないのが今の現状だ」


 拓也がお茶を入れて飲むと、台所から沙夜が出て来た。


「金城さん、調べたけど、タイムマシンに異常があるとかそういうのではなく、元の時代に戻れない現象が起こっているみたい・・空間の歪みが無いみたい」


 沙夜が拓也に報告すると、「そうか。たまにある現象だな・・これにもタイミングがあるから難しいな・・」


「そうみたいね・・」


 沙夜がiPadとメモ帳を置いた。拓也は落ち込んでいる未来と蓮を見て「お茶でも飲むか?」と聞くと、2人は「うん」と答えてお茶を飲んだ。


「おいしい」


 蓮はお茶を飲んでほっとしたのか、足を伸ばして「ふう」と一息ついた。


「おいしいだろ。さんぴん茶だ。3月と言っても、沖縄じゃ寒くないからな。後、未来―が好きなちんすこうだ。この時代は今のような形じゃないけどな」


 拓也はちんすこうを置くと、そこには現代のギザギザ長方形のちんすこうとかつての平べったい丸形に菊模様が入ったちんすこうが混在していた。


 ちんすこうが好きな未来はそれを黙々と食べていた。


「未来―ちんすこうが好きなのはいいけど、蓮の分も残せよー」


「はーい」


 拓也はやや微笑みながら未来がちんすこうを食べている姿を見ていた。蓮もちんすこうを一口食べると、拓也や沙夜にこんな事を聞いた。


「あの・・言っていいのかどうかわからないですけど、その・・拓也さん達は何でここに来たんですか?」


 自分達と違い、赤瓦の家のタイムマシンという高性能な機械で来る彼らの存在が2016年から来た人間とは思えなかったのだ。


 その質問に対し、拓也と沙夜はやや気まずそうな表情をしていたが、蓮にこう答えた。


「財団と敵対している組織からVANISHヴァ二ッシュという機械を回収するために来たんだよ」と


 蓮は「組織」や「VANISH」が何なのかわからず、「え?」という表情をした。






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