第1話 松尾山にて
1916年、那覇区の久米と若狭の間にある
「あれ?お母さん?」
少女は福州園に戻ろうと思っていたが、急に景色が変わり、松林だらけの山林が広がっていたので、困惑していた。
「ここどこ?」
少女はスマホで家族に連絡しようとするが、なんと携帯は圏外となっており、繋がらなかった。
「どうしよう・・・怖い・・・」
少女はここがどこだがわからず、一瞬、パニックになった。少女が隣を見ると、うつ伏せで倒れている年上の女性がいた。女性もやはりこの時代にはそぐわない恰好をしていたが、少女と違い、栗色に染めた髪、綺麗に施されたメイク、花柄のワンピースに小さめのカバンとオシャレな格好をしていた。
倒れていた女性が起き上がると、少女は「わっ」と声を出して尻餅着いた。
女性は少女を見て「うける。なんで尻餅着いたの?」と未来に聞いた。
「だって急に立ち上がったから」
「そう。じゃあなんでここにいる?」
「なんでと言われても・・家族と福州園で歩いてたら、急に・・」
「えー蓮もだよー蓮も彼氏と福州園にいる時にこっちに来た」
蓮と名乗る女性も少女と共に松尾山に来たらしい。
「そうなんですか・・・あの名前は蓮さんですか?」
未来は蓮に名前を聞いた。
「うん。
蓮は少女に名前を聞いた。
「
未来は自身の故郷である嘉手納の一地域「兼久」という地名を言うと、地元が近い蓮はなんとなく理解した。
「へぇー未来ーって言うんだ。よろしく!蓮、関西の大学に通っているよー未来ーは何歳?」
「今年で16歳になりました」
「えー高校生!老けているねー大学生かと思った」
蓮は未来の見てびっくりした。見た感じ自分と一緒か少し下にしか見えないからだ。
「高校生です」
「そうなんだ。で、ここどこかわかる?」
「わかりません」
「だよね」
蓮は周辺を見渡しても松林しか見えなかった。
「ねぇもう少し進んでみる?」
蓮が未来に訊ねると、未来は「うん」と答え、松尾山の頂上部分から降りようとすると、そこには赤瓦の家があった。
「未来―家があるよー人が住んでいるのかな?」
蓮は赤瓦の家を指さした。未来は用心深いのか一歩、後ろに下がり、「わからない。でもあまり近づかない方がいいんじゃない?」と言ったが、蓮は「でも人がいるかもしれない入ってみよう」と赤瓦の家に向かった。
「えー行くの?」
未来はやや嫌そうな表情をしていたが、蓮と共に赤瓦の家に向かった。
赤瓦の家に向かうと、そこには石垣とヒンプンがあり、観光施設で見かけるそれと変わらない者だった。
「ごめんぐださい」
蓮は石垣の中に入ると、そこからTシャツにズボンをはいた男女が出て来た。
男性の方は褐色肌に堀の深い顔立ちをしていたが、女性の方は色白で長い黒髪の美女だった。
彼らはどこからどう見ても現代人にしか見えなかった。蓮は自分達と同じようにここに来てしまった人達だと思い、「すいません、ここどこかわかりますか?」と聞いた。
男性の方が蓮に「ここは1916年3月26日の沖縄だ」と答えた。蓮は「え?1916年の沖縄?2016年じゃないの?」と自身が過去に来た事に対してかなり困惑していてたが、未来は男性を見て「おじさん、どうしてここにいるの?」と聞いた。
「仕事だ」
「仕事?おじさんも新聞記者じゃないの?」
未来が不思議そうな表情で拓也を見ると、気まずそうな顔で「あれは表の仕事だ」と答えた。
「表?じゃあ裏もあるの?」
未来のさらなる質問に拓也も「・・」と黙っていた。
蓮はそんな未来の様子に驚いた。
「え!未来ーこの人達と知り合い?」
「うん。この人は
未来は金城拓也とされる男性を紹介すると、蓮が「叔母さん?言いづらいけど、もしかして1年前に転落した新聞記者?」とどうやら彼女は未来の叔母の事を知っていたようだ。
未来は暗い表情をしながら「うん。あっ、おじさんの前で叔母さんの事、あまり言わない方がいいよ。おじさん、おばさんが亡くなったの事故とか自殺だと思っていないから」ボソッと小さい声で蓮に話した。
「えー!もしかして他殺だと思っているの?」
蓮は目を開き、未来に聞いた。
「みたい・・おばさんが自殺するはずないってね・・」
未来が小さな声で話すと、拓也が「詳しい事は後でだ。入るぞ」と言われて2人は家の中に入った。
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