第9話

その夜は、最後は由貴さんと一緒にシャワーを浴びなおして、由貴さんに背中から抱きしめられて眠りに付いた。


結構遅くまで起きていたのだが。


翌朝、私はいつもの時間に気持ち良く目覚める事が出来た。


傍らにはユキさんが私の前でまだすやすやと寝息を立ている。



起こさない様に静かにベッドを降りて、部屋を出て、洗顔と歯磨きを済ませて、日課のプランターの水やりをして朝食の用意をしているとユキさんが起きて来た。


日課のジョギングの格好をしていた。



「じゃぁ、行って来るね」


「はい。お気をつけて」



玄関まで一緒に行き、ジョギングに出かける由貴さんを見送って、私は朝食づくりを再開した。


朝は時間があるので、凝った朝食を作るつもりだった。


今日の朝食は、サンドウィッチだ。


基本の卵サンド用の具を作る他に、ボリュームのあるコンビーフを作ったサンドウィッチやアンチョビを使ったものまで作った。



夕食の賄い用に、シチューを作ろうとブロック肉を人参や玉ねぎなどの根菜と一緒に圧力鍋にかけて下ごしらえも済ませた。


それらも全部終わって、後は由貴さんの帰りを待つだけとなって、私はリビングのテレビをつけた。



「クルーゼ船の乗客の下船がすすみ、海外の渡航者も帰国の途に……。世界保健機関は………」



少しずつ、感染症の脅威が身近に迫って来てる。


これから、どうなるんだろう?


つい最近までは、エボラ出血熱やデング熱とか、あまり身近に感じる事のない感染症のニュースを聞く事はあったが。今回のコロナと言う感染症は、遠くの出来事と思いきや、少しずつ確実に身近に迫って来ている気がして不安に駆られる。


やがてニュースは、政治や芸能関連のものに移り変わり、由貴さんが帰って来たので、私はテレビを消して由貴さんを出迎えに玄関へ向かった。



その時は、まさか自分の生活や人の生活や社会を変える程の大事態になる事まで、私は予期など微塵もしていなかった。



「先にシャワー浴びて来るね」


「はい。お茶淹れましょうか?」


「うん」



私はバスルームへ行く由貴さんを見送って、朝食の準備を始めた。


朝はゆっくり朝食を摂って、昼食は由貴さんと外食をした。



私の実家近くにある、パスタとパフェが絶品のお店で、くじらをオマージュしたお店のロゴが可愛い。


私はここに来ると、カルボナーラ一択になってしまう。


ニンニクが効いていて、それがまた、食欲をそそるのだ。




小ぶりのパフェがついて来るセットを頼むと由貴さんも私と一緒のものを注文した。



「セイは本当にパフェが好きだよね」


「女の子ですから」



半年後には母親になろうと言うのに、何言ってんだがと心の中で独り言ちるのをよそに由貴さんは優しく『可愛いね』と言ってくれた。

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