第6話

午後21時。


私は由貴さんとの約束通り、お店を切り上げて部屋に戻った。


お風呂に入って、寝支度を済ませるともう23時だった。



夕食は賄いだったので、後は、夜更かし厳禁で、ユキさんの自室で眠りに付いたが、夜中、由貴さんの気配で私は目をさました。



「ごめん、起こしちゃった?」



簡易照明で薄暗い部屋明かりとか、気配とかじゃなくて、ただ単に目が覚めただけ。


妊娠してから、時々、眠りが浅くて目が覚める事があって、今まさにそれだった。



「いいえ、ちょっと眠りが浅かっただけです」


「最近眠りが浅いの?」


「はい。悪阻が酷かった時ほどではないんですけど……」


「俺が夜、部屋を出入りするから、別の方が良いかな」



由貴さんは心配そうに私にそう言った。


私は、思わずベッドを飛び起きた。



「それは、嫌です……。由貴さんが、気を遣うなら、我慢しますけど。う~、やっぱ、我慢カラダに良くないんで! ここは由貴さんが我慢してください」


「いや、俺が何を我慢するって話なのさ!」


「私の眠りを妨げるかも知れないという懸念を拭えない状況をです!」


「的確に、とんでもない提案するね。……じゃぁ、心苦しいけど、俺の事我慢して」



それも、変な話だ。


何はともあれ、同室別居の危機は逃れる事が出来たのだが、さっぱり目が覚めてしまった。



「由貴さん、夜食は?」


「今日は大丈夫。お風呂も入ったし、もう寝ようと思ったんだ」


「じゃぁ、一緒に眠れますね」


「そうだね」



由貴さんがベッドに上がって私の隣に入って来た。


私は何だか嬉しくて、由貴さんに肩に手を回して抱きしめた。



「セイ?」


「最近、あんまりぎゅっとしてなかったんで。……したくなっちゃいました」



由貴さんの頬に頬を寄せて、キスをせがむと。


由貴さんは、弾ける様に私と唇を重ねて、私の口の中を舌でかき乱した。


ちょっと想定外だったが、それ以上に息苦しくなる位、激しいキスだった。



由貴さんの手が首元に当たって、気が付くと上着のボタンを外されていた。


パジャマの下から、タンクトップの下着の中をはぐって胸を触って、唇を離して胸元に唇を寄せ、パジャマのボタンを全部外した上着をはぎ取ってしまった。


あれ、私、何か押してはいけないスイッチを押してしまったのかも知れない。



「ゆ、由貴さん」


「ごめん、セイのカラダ、我慢できない。もっと、しても良い?」



ナニを?


えっと……



「ぐ、具体的に?」


「……ちょっとだけ、触っても良い? あと、セイを裸にしたい」


「え?」


「ずっと、セイに負担かけたくなくて。……我慢してたんだ。 ごめん。 怖いよね」



由貴さんに触られるの?


そんな。


いつも、優しく抱きしめてくれるし、接してくれるし、怖い事も、不安も感じた事なんてないのに。


妊娠して、そんなに私に気を遣ってくれてたなんて。



「そんな事ないですよ。……私も由貴さんに触れたい」



由貴さんにパジャマの上着に手をかけると、由貴さんは私に脱がせてくれず、自分から上着を脱いだ。



「煽るね……」



私は、由貴さんのその脱ぎっぷりに鼻血が出そうですけど?


私だって煽られている気がする。



私は、由貴さんの胸元にキスをした。


脇腹に両手を当てて撫でる様にくびれた筋肉のラインをなぞると、由貴さんは私をベッドに押さえつけて、私のお腹に顔を埋めておへそにキスをした。



「セイの肌、気持ち良いよ」


「くすぐったい……です」



由貴さんは私の下着と一緒にズボンを降ろして脱がせると、私の肩脚を持ち上げて開かせた。



「そ、それは恥ずかしい……です」


「駄目。もっと、見せて」



いや、これ以上、私、見せるところないです。


混乱する私をよそに、由貴さんは太ももの付け根にキスをして膝までゆっくりとキスを続けた。


お腹の下がきゅっと締まる感覚が前よりちょっと痛かった。



「あっ……、やっ……、ダメ。……怖い」


「え?」


「ごめんなさい。お腹が、前とちょっと……違って」



いつもなら、気持ち良いけど。


前と違った違和感があって、不安になってしまって。



「ごめんっ」



由貴さんは驚いて、顔を上げた。


心配そうに見つめる由貴さんに私は情けなくなってしまった。



「……由貴さん、私」


「大丈夫? 気分悪い?」


「悪くないです。大丈夫です……。あの、触られるのは、ちょっと不安があって。でも、私は触りたくて。由貴さんとしているのやめたくないんです」


「でも、無理しちゃダメだろ? ……俺がごめん」


「嫌、です。触られるのが不安なので、触るにシフトチェンジしたいんです!!」


「え?」



私は由貴さんを逆にベッドに押し倒して、上に押さえつけた。


勿論、力で私が由貴さんに敵う訳がない。


由貴さんが私にされるがままに、押し倒されたのは、どうして良いか分からず、身体に力が入っていなかったからだと思う。



「私が触りたいんです。……由貴さんに触らせて下さい。そしたら、必然的に、由貴さんだって私を触っているじゃないですか?」


「……理屈としては、そうだけど」



私は困惑する由貴さんに覆いかぶさって、キスをして上半身を密着させて、由貴さんのカラダに寄り添った。

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