好きなだけ、貰え

第6話

好きなだけ、貰え




「きゃぁっ!!」





バイト、二日目。




神埼家に朝食を作りに行こうと家を出た朝6時過ぎ。


家の前に、『しず』が立っていた。




スラリとしていて、端正な顔立ちなのに、筋肉質な体躯が怖い。


いつも、睨んでいる様な怖い顔をしている。


愛想笑いもしないし、冗談も言わない。




「朝はもう15分遅くて良い」


「へっ?」


「送ってやる、乗れ」



えっ、バイク!!


朝っぱらから私服だと思ったら、バイクで来たの?



『しず』は、ヘルメットを私に渡して


私に後ろに乗る様促した。




「乗らないとダメですか?」


「嫌なのか?」


「怖い」


「そんなにスピードは出さない」



いや、怖いのはバイクじゃなくて『しず』なんだけど。


でも、何かちょっと、心が和んだから、乗り込んでしまった。





神埼組に向かった後、早速朝食作りに取り掛かった。


朝食の時には、『しず』は高校の制服に着替えていた。


高校生だ、本当に。


もう立派な社会人に見えたから、にわかに信じがたいのだけど。





朝は『ご飯と味噌汁、卵料理、野菜料理、肉OR魚を出す』様に、とあった。




煮干しの出汁で、豆腐と油揚げ味噌汁を作り、卵焼きを作り、塩鮭を焼いてキュウリの浅漬けを出した。




浅漬けと言っても塩もみしたキュウリに砂糖を小さじ1加えたもの。




貧乏っちぃって言われたらどうしようと思った。





この朝食スタイルは、前に友達の家にお泊りした時に知った習慣で卵焼きに大根おろしを添えると言う衝撃の展開には言葉を失ったものだ。



「あきちゃんの所は、しっかりしとるのう?」


「へ?」


「朝から完璧な朝食じゃ。手間がかかるだろう?」


「いいえ、お弁当屋で要領を掴んでいるだけです。 それに、うちはいつも食パンとか、ごはんに味噌汁だけで、これは前に友達の家でご馳走になったのを参考にして、あっ、浅漬けとかはお弁当屋さんで覚えたんですけど…」





昼のお弁当は、幕の内弁当を意識して、メインを毎回変えるほかは卵焼き、胡麻和え、煮物、色見の良い野菜を固定にするのを意識しながら作った。


今日のメインは、冷凍庫の赤魚をあんかけにした。

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