神埼 静流の結婚

好きなだけ、買え

第1話

好きなだけ、買え





「欲しいものは好きなだけ買え。領収書だけ貼って見せれば、現金で払う。仮払いで10万渡す」



突然、現れた顔の怖い男の人に連れて来られた場所が、まさかのヤクザのお屋敷であろうとは。



私服で現れた自称17歳。


歳より実家の稼業を提示して欲しかった。


どうしよう、もうお家に帰れないのかな、私……。




幸い、妹の友達に同じ様な居住まいのヤクザが居るので、敷居をくぐる前後で『気絶』するのは回避できたけど。


その子の家とは、広さもお金のかけ方、組員の数も全然桁違い。



だって、その子のうち、最近水道料金も払えないって言ってたんだもの。


きっと、その子のうちみたいにアットホームなヤクザじゃなくて、きっと、血も凍る様な怖い事尽くしで私腹を肥やして、お金儲けする悪い人達に違いない。



男は私にお札の束を差し出した。


10枚位ありそうだ。


全部、一万円札だった。



「こんな大金、持ち歩けません」


「じゃぁ、帰りは金庫にしまって帰れ。台所に置いてやる」


「え? 何をですか?」


「金庫だ。 物分かりが悪いのか?」


「……」



何かと人を馬鹿にして、いけ好かない。



最初会った時から、超偉そうだし、超機嫌悪いし、超絶イヤな奴!!



物分かりとは別だって!!


何か発想が常人離れしているから、理解に苦しむの。



「月、水、金の週3で、三食作れ。朝6時に出勤して、朝食の用意の後は、昼食の弁当作って8時に登校しろ。下校後は、夕食の用意と片付けまでして、21時まで。文句は?」


「……お時給は?」


「残業別、固定10、不服か?」


「10円?」


「今世紀最強のバカか? 万だ。日本の単価を知らないのか」


「知ってますから」



うっそ!!


夏休みだって頑張っても、7万だよ、お弁当屋。


週3で、本当に私に10万くれるの?


ええ!!



『でも、本当にそれだけ』



だって、ここはヤクザの本家だよね。





『危険な粉の取り扱いや持ち運び』


『危険な武器の取引の手伝い』


『危険な人のお世話係』


『危険、危険、エトセトラ』



どうしよう。


なんで、こんな事になった?


私、中学の同級生のお弁当屋でバイトしてたはずなのに。


いつの間にか、ヤクザの屋敷で料理するバイトする事になる訳?

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