第2話
不意に男が後ろから近付き、私の背後を取る事に成功し、羽交い絞めにしてきた。
「遊びは終わりだ。地獄を見せてやる」
「タダで帰して貰えると思うなよ」
そう言って、前方から近付いて来た男が私の顎に手をかけて来た。
私は頭を前に倒して、思いっきり頭を振り上げ、ヘッドバットで背後の男を倒し、目の前の男の鳩尾に蹴りを入れてやった。
「弱い癖になんでお前らに媚びなきゃいけないの?」
何で、母さんこいつらに文句も言わず、今年の祭りは諦めるなんて言うのかな。
うちらもう、明日食べるお米だって買えないのにさ。
「はあ! 何だこれ!」
突然、きょとんとした声が聞こえて振り返るとそこに、スーツを来た若いお兄さんが立っていた。
今までこの場に居なかった人だ。
前髪をオールバックにして、このクソ暑い真夏の真っ盛りに背広のジャケットをきちんと着こんでいるのが暑苦しかった。
さすがにネクタイは締めてないものの、暑いだろうに。
「若頭。何か、そこのガキが一人で……」
「はあ? 冗談だろ。 はあ!!」
そう言って、私をジロジロ見た後、大笑いした。
まるでお笑い番組見て笑っている様な反応にイライラが募る。
私より身長低いからか、高校生みたいに見えた。
「お前、貞子みたいだな」
「……うっさい」
若頭って呼ばれてたから、喧嘩強いんだろうな。
ほぼ半分の組員を倒したのに、そんな私に余裕しゃくしゃくなんてさ。
「嘘、嘘。お前、何してんの?」
「……あんた、誰?」
「俺? 俺、ヤクザ。ビビった」
いやさ、若頭って呼ばれてて気づいたっての。
名前聞いたんだよ。
私だってヤクザなんだからさ。
「こんなヤクザだらけの中で、ヤクザじゃない方が逆にビビるよ」
「はあ? お前、度胸あるな。ヤクザ怖くねえの?」
「……ヤクザが、ヤクザ怖がってちゃ、世話ないわ」
「はあ? お前、どっかの組のヤクザなのか? ガキの癖に」
「ヤクザのガキは、ヤクザだろ? そんなに珍しい訳なくない?」
「ふ~ん、で、お前どこの組?」
「宗像組ってあこぎなヤクザに、ここのシマから追い出された組だよ」
「はあ! 何、復讐に来たのか? それで、お前?」
「悪い?」
段々腹が立って来て、私は取っ組みかかって行った。
「おいおい。何、そんなに怒ってんだよ。仕方ないだろ、力関係でもう、完全に分が悪いんだ。平和的に手を引いて、事を納めたのはお前の組の組長だぜ」
「入院中なのを良い事に好き放題やりやがって! ふっざけんな!」
私が殴りかかると、苦笑いして身を躱そうとしたが、私は容赦なくそれをさせずに、きっちり横っ面を拳で仕留めた。
「イテェ! だとしても、お前んとこの組長が入院したのは、俺の組の性か? 勘弁しろよ」
まだ、気が治まらないので、太ももに回し蹴りを食らわした。
「落ち着けって、こんな事してっと、後で困んのお前だぞ」
「もう、どうなったって良い! 殺したきゃ殺せば! もう全部、何もかも嫌! 大嫌い!」
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