第3話

「あぁ! そうかよ! 気に入らなえなら! 気の済むまでやれよ!」



そう言って、男は私の前に進み出て来た。


思わず、正面から蹴りを入れたら、股間にもろケリが入ってしまった。



「はぐぅっ あ!」




痴漢じゃあるまいし、さすがにやり過ぎた。


ちょっと、罪悪感が見栄えて、私はやっと少しクールダウンした。





「テメェ、若頭に何してんだよ!犯すぞ」




私が立ち尽くしいると、背後から人の声がして、振り返った時にはもう目の前に、割れたガラスの瓶がすぐそこまで迫っていた。



不意打ちかよ!



咄嗟に顔に手を翳していたが、相当痛いだろうな、割れたガラス瓶を振り下ろされたら。


今更、どうしようもない。


そう思った。




「よさねえかっ!」



股間を蹴り上げた男の声に、振り下ろされるガラス瓶がぴたりと止まった。



「若頭!」


「手出すな!」



男を振り返ると、本気で怒って私を睨んで来た。



「お前のとこの組に、俺の組が、このシマ譲り受けるのにいくら払ったか聞いてて腹立ててんのか?」



「はあ?」



何それ……。





嘘……。



「答えろ。いくら払ったか、ちゃんと聞いてて、それでも納得出来ねえで来たのかって聞いてんだ」




――― 母さん ―――



嘘。


何も言ってなかった。




でも、病院代払えないと、病院出て行かなきゃってなってたのに、お父さんまだ、病院いるよね。



――― あぁ、もう最悪 ――――




「……」


「黙ってねえで、答えろっつってんだ! 犯さねえから答えろよ」




「聞いてない……でも、病院代払えないと出て行かなきゃいけなかったのに、まだ病院に居られるって、そう言う事だから。私が……ごめんなさい」

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