第15話

床に落ちた録画用のスマホのカードを二つ織りにして、スマホ事体はバキバキにしてやった。




不意に、後部座席後部のトランクドアが開き、運転席の男達が姿を見えた。




ドアを開けた瞬間、立ち込める血の匂いに蒸せたのか、口に手をやった。



「うえっ!! 何しやがんだ!」


「車から出ろっ、警察呼んでやる!」





女のヒステリーみたいに喚くな、醜い。



私はその場に腰掛け、膝の上に頬杖を付いた。





「歌舞伎町で―ファルコ―、―神埼組―に関わるなんて随分なバカとは思ったけど?警察? 動かない、動かない」





歌舞伎町二大勢力を口にしてみたが、二人は意外にも、その二つの勢力に覚えがない様だ。




正真正銘の素人なんだろう。



そう悟ると、急に興冷めしてしまうのだった。



玄人が素人相手にムキになるのは、恰好悪い事だ。


美学がないから。





「大人しく、仲間を連れて帰りな。今日は見逃したげるから」



もうそれ以上、クズに興味はなかった。


だから、私は着衣の乱れを整え車を降りた。


まるで、ちょっと肩がぶつかって、それを不快に感じただけの様な気持ちだった。



こんな事にいちいち心を乱していては素人だと思った。






でも、それは間違った考えだった。

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