第13話 攻防戦①
絶体絶命のピンチに陥るまりんちゃんの面前に、
容姿端麗の神様が放つ
「……始まったようだな」
ぴりぴりとした空気の流れを読み、真顔を浮かべる神様がそう、冷静沈着な雰囲気を漂わせながらも声を低くして呟く。
「そなたの出番だ」
「えっ?」
面と向かって、唐突に出番と告げられたまりんちゃんは、きょとんとした。
「たった今、この先で
まるで、神様自身がその場に居合わせているかのように現状を察し、分析をする。
まさに
イヤッ……! 感心してる場合じゃないから!
と言うことにすぐ気付き、まりんちゃんは内心、自分で自分自身につっこんだのだった。
「細谷くんがピンチなら、助けに行かなきゃだけど……」
そこまで言いかけて口を
死神総裁カシン様と実際に対戦してみて、まりんちゃんは細谷くんよりも力が弱いことを痛感した。
自分自身が
「まりん。実力も立場も、シロヤマよりカシンの方がずば抜けて上なのだよ」
「ですが……私は、弱い人間です。シロヤマだけでなく、セバスチャンさんとも対戦しなくてはならない。自分で……自分の身を護ることすらできない私が彼らと対戦して、勝ち目はあるのでしょうか」
戦意喪失したまりんちゃんの言葉から、迷いが見える。面前に佇む神様はまたしても、まりんちゃんの心を見透かした。
「勝ち目はないだろう」
面と向かって、真顔でばっさり
「そなた、一人のみではな」
気取るような笑みを浮かべて言葉を付け加えた。自信と余裕のある神様の言葉から、まりんちゃんは少しばかりの希望を見出したような気がした。
希望の光が宿る眼差しで、まりんちゃんはふと顔を上げると、面前で佇む神様を見詰める。
「案ずるな。そなたがどこに行こうと、必ず援護する。私達が傍についている限り、
しっかりとまりんちゃんの目を見詰めて断言した神様に、まりんちゃん自身、違和感を覚えた。
この場所にいるのはまりんちゃん本人も含め、神様と死神総裁カシン様の三人だけである。これは思い込みなのだろうか……いや、それは思い込みではなかった。神様の身体越しに見える何かを凝視したまりんちゃんは思わず、息を呑む。
不穏さの中に神々しい雰囲気が漂うこの場所にもう一人、誰かがいる。両肩に、金色の飾り房が付いた留ね金つきの銀白色のコートを羽織り、背中くらいまである白髪を、灰色の紐で一つに結んだその人は、こちら側を背にしているため、どんな顔をしているのか分からなかったが、よほど体格のいい男性のようだ。身長百五十五センチのまりんちゃんよりも背が高い神様が、
青江神社の最高神の他にもう一人、まりんちゃんにとって強力な
***
強い力を内に秘めた魔女や魔法使い、和と洋を織り交ぜた装いの剣豪の合わせて七人を、己の魔力で以て具現し、対戦相手を威圧させる。そこまでは、細谷くんの狙い通りだっただろう。しかしいくら魔力を駆使して仲間を
細谷くんと対戦するシロヤマは、交戦開始後すぐ、それを見抜いた。と言うのも、武器にもなる大鎌を駆使して、次々と攻め込んで来る人間と対戦するうちに、彼らの攻撃力が細谷くんとまったく同じであることに気付いたからだ。それからが早かった。細谷くんの戦術を見破ったシロヤマは己の魔力で以て、銀色の
「きみの分身も、大したことないね。冥界の中で強者に入る俺の分身に、
さりげなく、得意げに自己アピールしたシロヤマがそう言って、細谷くんを嘲った。
「今のはほんの、小手調べだ。俺の本気はこんなもんじゃねェ……」
「その辺にしとけよ。どんなに凄んでも現状は変わらない。この勝負、俺の勝ちだ」
その顔には薄ら笑いが浮かんでいたが、声のトーンは低く、細谷くんに触発され、凄みを利かせているように思えた。勝利を確信したシロヤマが大鎌を振りかぶり、細谷くんめがけ突進する。
威圧感漂うシロヤマにはったりを見破られ、万事休すの細谷くんがこれまでか……と諦めかけた、その時。
「……っ!!」
金色に光り輝く結界が発動。細谷くんを包み込む、半円形状の結界にシロヤマが振り下ろす、大鎌の刃が直撃。金色の波紋を描き、高音を轟かせた。
細谷くんが張ったにしては、
直感で警戒したシロヤマは、すばやい身のこなしで後方へと下がる。
「そのままで、聞いて」
背後から聞こえたまりんちゃんの声に従い、細谷くんは前方にいるシロヤマを睨め付けながらも、耳を
「約束を破ってごめんなさい。どうしても気になって、細谷くんを追いかけて来ちゃった。そしたら、細谷くんがくれたお守りの中から神様が現れてね……頑張れ、死神に負けるなって、力を貸してくれたの。効果抜群のお守りをくれたお礼に、細谷くんには私の力を分けてあげる。だから……」
細谷くんと背中合わせになりながら、小声で話しかけるまりんちゃんはそこで一旦区切り、
「
左手でぎゅっと、細谷くんと手を繋ぎ、微笑みながら励ました。
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