第4話 おじさん、初めてを奪われる

 



 山賊達のアジトから無事に出る事が出来た。外では、キャロムさんの配下の方が馬車を用意して下さり、その足でレアルカリアと言う街まで向かっている。今はその道中だ。



「あ、あの……キャロムさん?」

「妾の事はキャロムと呼び捨てでお願いします。又はキャロムお姉ちゃんと呼んでくれても……いいえ、キャロムお姉ちゃんと呼んでくれないと拗ねちゃいます」

「キャロム」

「即答ですの!?」



 一緒に馬車に乗る道中色々な話をキャロムさんと話して分かったのだが、この人スキンシップがとにかく激しすぎる! こんなに心臓がドキドキしたのは初めてかもしれない。キャロムさんからめっちゃ良い匂いがする。


 しかも、一つ一つの行動や仕草がとにかくエロい。思わずチャイナ服の隙間から覗く美しい太腿に目がいってしまうのだ。見えそうで見えないこのもどかしさ。だけど、私も大人だ。理性を保つくらいの事は容易いこと……だと信じたい。絶対領域も捨て難いが、チャイナ服の見えそうで見えないと言う、この焦れったさがまたムラムラして来る。もし、私の股間に息子がご存命であれば、今頃ビンビンになってモッコリさせてたに違いない。



「姫様、まだ街に辿り着くまで時間があります。この馬車の中は、妾と姫様の二人きりですね……」

「え、そうですね……」

「姫様、敬語は禁止です。下の者に示しが付きません。もっと堂々として下さいまし」

「あ、はい。すみません……ごめん」

「はい、それで宜しいのです♡」



 何だかキャロムさんの口角が少し上がったような気がする。しかも、物凄くニコニコと優しそうな表情を浮かべてる……何だかデジャブな気がする。



「あらあら、姫様は妾の太腿や胸に興味がおありですか?」

「あ、ああそ、そんな事は……!?」



 しまった……無意識の内にそんなに見ちゃってたか。だって、こう見えても中身おじさんなんですよ!? しかも、この身体になってから、性欲の方も若い頃のように舞い戻って来ているような気もするし……本当なら一人の時に自分の身体もゆっくりと観察してみたいのも本音だ。



「姫様のお胸やスレンダーな身体……素晴らしい玉体でございます♡ 超恵体ちょうめぐたいですのじゃ♡」

「あ、いえ……そんな」



 私って、こんなにコミュ障だったけ……頭の中が真っ白になって絶賛パニックに陥っている。キャロムさんの艶やかな唇……モデルのようなメリハリのある美しい身体。



「姫様、妾の膝の上においでくださいまし」

「ええええええぇぇぇっ……!? そ、そんな! 私はおじさんで……ごにょごにょ……」

「もう遅いです♡」



 私の身体を軽々と持ち上げられたぞ!? あぁ……恥ずかしい……46歳のおじさんが若いお姉さんの膝の上に座るとか、通報案件じゃないか。



「まだお時間は沢山ありますから♡」

「きゃ、きゃろむさん!? 胸があた、あた……私の背中にあたってます!!」

「妾も身体に少し自信がありますのじゃ♡」

「いや、そういう事では……!?」



 私の背中越しに伝わるキャロムさんの巨乳……私が今着ている服も薄いので、キャロムさんの乳房が……あれ、キャロムさんの乳房少し固くなった?



「んんっ……」

「はひっ……!?」

「姫様のうなじ……それに綺麗な金色の髪の毛。ずるいです……盟主様と言い、マリア様やソフィア様は正に美の完成形態……ぺろり♡」

「ひゃあんっ……!? や、やめ……」



 キャロムさんが私のうなじにキスしたり、耳元で吐息を吹きかけて来たりと私を殺しに掛かって来てる!? しかも、逃げられないようにと腕でガッチリと私の身体を抱擁しているのだ! 


 キャロムさんこのままでは、【おじさんキラー】と言う不名誉な称号を手に入れてしまいますよ!? 46歳のおじさんとえっちしたら、世間体から見ると援交と思われてしまう!



「姫様、私が手取り足取り色々と教えますので、どうかご安心くださいまし」

「安心できないよっ……!?」

「大丈夫です。最初は皆不安に思う事でしょう……妾も純粋だった頃が久しいです♪」



 あぁ……キャロムさんの手が私の胸や太腿に……まだ自分の身体をちゃんと確認してないのに、キャロムさんに初めてを奪われてしまうのか? 胸を触られるだけで、こんなにも感じてしまうのに……



「うふふっ……姫様のあそこ、こんなにも濡れておりますのじゃ♡」

「ま、待って……心の準備が……」

「記憶喪失でも大丈夫です。身体は素直なものです。ついでに綺麗なお召し物にも着替えてしまいましょう」

「だ、大丈夫ですので! 1人で着替えを……んんっ!?」



 キャロムさんの方へ首を振り向かせると私の口に柔らかい少し濡れた唇の感触……人生初めての女性とのキスだ。こんなにも柔らかいものなのか……そもそも、今の私の身体は女性だ。キャロムさんは何故女の人同士でキスをするの?



「わ、私は女ですよ……あ、中身はごにょごにょ……」

「妾は殿方に微塵も興味がございません。むしろ、女性は女性同士、殿方は殿方同士で愛し合えば宜しいかと存じます」



 キャロムさんかなりの性癖を拗らせてる!? 女の子同士は、確かに悪くは無いのかもしれない。でも、男同士とかそれって、ただのホモになるのでは……



「ナイトメアがこの世界を支配したら、盟主様に1つ夢を叶えて貰うです」

「夢?」

「はい、それは……同性婚です! 妾はこんなにも女性を愛していると言うのに! 愛する者同士が結ばれない、この腐った世の中が嫌いなのじゃ! 愛さえあれば女性同士でも子供を設けることだって出来る筈じゃ!!」



 キャロムさんに変なスイッチが入ってしまった!? しかも、キャロムさんの今触ってるのは、私の……!?



「妾の楽園えでんに殿方は不要です!」

「ら、らめぇぇ……それ以上は……」

「良いじゃありませんか♪ 姫様がそんなにもお美しいのがいけないのですよ? 姫様、妾のあそこを触ってくださいまし」

「はわ!?」



 キャロムさんに右手を掴まれて、強制的にキャロムさんのあそこへと手が伸びてしまった。抗おうとしたのだが、予想以上にキャロムさんの力が強く、私の今の力では到底かなうものでは無かった。



「す、凄い……」

「妾のあそこ……こんなにも濡れてしまいましたよ……責任……ちゃんと取ってくださいまし♡」



 これが……女性の……キャロムさんのパンツが……



「キャロム様! お忙しい中、失礼します! 一大事で御座います!」

「何じゃレティ! 騒騒しいのぉ! これから良い所じゃったのに!」

「す、すみません! ですが、盟主様から緊急で幹部会を急遽開くとの仰せです! マグリウス共和国にて、執行者ラクリマ・オペランディ様が担当する支部が襲撃されたとの事!」

「何じゃと!? 我等ナイトメアに喧嘩を売るとはええ度胸をしとるのお……何処の馬の骨じゃ!」



 おお、キャロムさんの雰囲気が一瞬で真面目な雰囲気に切り替わったぞ。ここまでスイッチを切り替えられるのも中々凄いな。



「姫様、申し訳ありません。今から我々の本拠地シャルマーレ城までお越願いませんでしょうか?」

「え、あの……」



 いきなり知らない人達に合っても馴染める気がしない……それに私は平和に過ごしたいのだ。そう言う揉め事にはなるべく関与したくない。



「すみませんが、私は行きません。このまま街へと向かいます。後、私の事は秘密でお願い致します」

「なっ……!? それは……」

「これは命令です」

「……!? 承知致しました。ですが、せめて護衛を付けさせてくださいまし!」

「は、はい……わ、分かりました」



 凄い迫力だ……護衛を付けて頂けるのは私にとっても有難い事。幸い私には山賊のアジトで手に入れたお金等がある。この袋の中に如何程のものが、入っているのかは分からないけど、しばらく暮らして行ける分はある筈だ。こんなにも銅貨や銀貨に金貨が入っているのだから。



「レティ! 姫様の事を宜しゅう頼む!」

「はっ! この命に変えましても!」

「姫様、申し訳ございませぬ。しばしの間失礼致します」

「いえいえ!」



 するとキャロムさんは急ぎ馬車の外へと出てこの場を後にしたのであった。



「レティさん、宜しくお願い致します」

「姫様!? 私如きに頭を下げてはなりませぬ! レティと呼び捨てでお願いします!」

「そ、そうですか? 分かりました」



 そんなに私は敬われる程の人間でも無いのだけどなぁ。それにおじさん的には、姫様と言うのはむず痒いし荷が重すぎるよ……なるべく人に迷惑も掛けたくないし、レアルカリアの街に入ったら仕事を探そう。おじさんに出来るような仕事があれば良いのだけど……


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